生前贈与 Q&A 一覧
贈与にお悩みの方からご質問が多かった内容をピックアップしてみました。
※令和4年現在の法令によっていますが、令和5年(2023年)・令和6年(2024年)~の改正分も可能な範囲で盛り込んでいます。
Q1.贈与税がかからない財産はありますか?
A1.
贈与税は、原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかりますが、その財産の性質や贈与の目的などからみて、次に掲げる財産については、贈与税がかからないことになっています。
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの。
ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
なお、
贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。
したがって、
生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には
贈与税がかかることになります。
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、
相当な範囲内のもの
祖父母・父母・養父母から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすもの(Q11.参照)
祖父母・父母・養父母から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすもの(Q8.参照)
祖父母・父母・養父母から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件満たすもの (Q12.参照)
相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産
など
≪関連ページ≫
●贈与税がかからない7つの贈与
をご覧ください
Q2.ずっと以前から年110万円以下で子や孫に贈与してきたモノでも相続申告時に否認される場合があるとききましたが、本当ですか?
A2.
本当です。
特に、贈与者の筆跡で子や孫名義の預金口座を開設していて、相続開始時においても、未だ子や孫がその預金を手付かずの状態のまま放置
している、いわゆる「名義預金」の贈与否認が増加しています。
その傾向はマスコミでもよく取り挙げられ、遺産分けでモメた時の家庭裁判所の判断も、同様の傾向にあります。
名義預金には時効がないので、まずは、専門家に打開策をご相談ください。
因みに、
今から子や孫に出金させても一括贈与となり、与税の時効より前にマイナンバーがスタートするので安易な対応は禁物です。
- ≪関連ページ≫
- ★「贈与が否認されないために」・・・相続税の税務調査をヘッジ●税理士意見書面の為の贈与成立の確認作業。贈与が否認されない為のポイント
- ★「贈与成立判定シート」・・・相続税の税務調査をヘッジ●税理士意見書面の為の実質所有者判定シートを用いた確認作業
- ★「マイナンバーが相続・贈与に及ぼす影響」・・・相続税の税務調査をヘッジ●マイナンバーが相続税・贈与税に及ぼす影響の説明・確認
- をご参照ください。
Q3.そもそも贈与税って、どれくらいかかるのでしょうか?
A3.
平成27年(2015年)1月1日以降の贈与分については、受贈する側を2通りに分け、それぞれ異なる税率となりました。
「18歳以上の子・孫・ひ孫が受贈した場合」 と
「それ以外の者が受贈した場合」
に分かれています。
「18歳以上の子・ひ孫が受贈した場合」は、税率が引き下げになりましたので、事実上の減税となりました。
それに対して、
「それ以外の者が受贈した場合」、つまり配偶者や兄弟、嫁、婿あるいは20際未満の子・孫・ひ孫が贈与を受けた場合は、税率が引き上げられました。
ちなみに、
この18歳以上か未満かというのは、贈与年の1月1日時点での判定となります。
この改正を生かして贈与を上手に使うことにより、相続税の増税対策をすることは可能だと思いますが、
今後の贈与は、Q4.にあるように1次と2次の相続税を合計した相続税割合と比較した上で行えば、結構な節税が可能と存じます。
≪関連ページ≫
★ 平成27年(2015年)~贈与税割合表
をご覧ください。
Q4.相続税を払って財産配分するのと、贈与税を払って財産配分するのは、どちらが得ですか?
A4.
令和5年(2023年)の改正が令和6年(2024年)からスタートし、相続開始前の贈与の持戻し加算が3年以内から7年以内に伸長されますが、
やはり、“相続”を待つよりも、贈与税を払ってでも金額次第では110万円を超える贈与のほうが得な場合が多くあります。
たとえば、
財産5億円を配偶者に50%相当経由して子ども2人が相続しようとすれば、1次と2次の合計で1億1475万円の相続税が必要となり、
この場合、
相続財産に占める相続税割合は22.9%になります。
しかし、
20際以上の子や孫ら計4人に、1人毎年500万円(贈与税割合10.6%)を5年間贈与したとすれば、
(贈与終了から3年以上経過の後、死亡と仮定
- ① 贈与税48.5万円/年×4人×5年間=計970万円
- ② 相続税5億円-500万円×4人×5年間(=1億円)=4億円
4億円に対する1次と2次の合計相続税は、7950万円 - ③ 贈与税+相続税=8920万円
- に下がります。
- ④ 税差額1億1475万円-8920万円=2555万円
- の節税となります。
これは、「相続税割」を下回る「贈与税割合」までの贈与税であれば積極的に活用する価値があることを意味します。
このように、目先の贈与税を払ってでも相続税とのトータルで節税となる“贈与額はいくらか?”を知る為には、相続と贈与両方の税割合を把握することは大切になります。
≪関連ページ≫
★ 令和6年(2024年)税制改正 相続税や贈与税、土地譲渡に関するもの抜粋
★ 相続or贈与 どっちが得?!・・・相続税と贈与税の比較検討
をご覧ください。
Q5.2500万円まで贈与税がかからない制度(相続時精算課税贈与制度)があると聞いた のですが、どのような制度ですか?
A5.
贈与年の1月1日において60歳以上の親から18歳以上の子や孫・養子に一人当たり2,500万円までは無税で、
★2,500万円を超えた部分は一律20%の税率
で贈与できる制度です。(※)
そのかわり相続の際は、その贈与分を遺産に加算しなければいけません。
いわば、“財産先渡し、納税後払い” の制度です。
もちろん、もらった側はもらった翌年3月15日までに贈与税の申告をしなければいけません(※)し、注意点もありますが、相続節税&争続対策に使えると思います。
≪関連ページ≫
★ ※は、令和5年(2023年)税制改正 により令和6年(2024年)から改正
★ 相続時精算課税制度の贈与を活用した相続税節税の実施(賃貸建物・値上り土地・自社株など)・・・大型贈与で有利に資産移転
をご覧ください。
Q6.相続時精算課税制度を利用して贈与したいと考えています。贈与のコツはありますか?
A6.
相続時精算課税制度で贈与した財産は、相続申告時には、時価が上がっていても贈与日の価額で相続財産に合算する決まりです。
ということは、
- ① 贈与後に値上がりしそうな土地や上場株・自社株など
- ② 将来収入を見込める賃貸建物など
を贈与すると有利になるわけです。
しかし、
将来に今よりも相続評価が下がりそうな土地・建物・株式などを贈与してしまうと不利になります。
他方、損得ではなく争続対策としての使い方もあります。
相続開始より前に支配しておきたい居宅やその敷地、自社株や事業に使っている不動産・機械などは、先にもらっておく事は損得抜きで大切だけらです。
≪関連ページ≫
★ 大型贈与で有利に資産移転・・・相続時精算課税制度贈与を活用した相続税節税の実施(賃貸建物・値上り土地・自社株など)
をご覧ください。
Q7.長年連れ添った夫婦間では贈与税の特典があると聞きました。必ずこの特典を使った方が得ですか?
A7.
その特典とは、
婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の土地・建物、又は、妻が居住用不動産を取得する際の現金を贈与した場合、
通常の110万円の基礎控除とは別に、贈与税申告を条件に2,000万円まで贈与税がかからないという制度です。
相続税においても、3年以内(令和6年(2024年)~7年以内)の持戻しの対象から外れるので、相続財産を減らすこともできます。
しかし、贈与税が軽減される反面、土地・建物で贈与する場合は、不動産取得税がかかり、登録免許税も、相続の時より高くなります。
弊社が夫婦間贈与のご相談を受ける際には、年々評価が下がる建物の贈与は1/100程度の持ち分に抑え、土地の贈与持分を200万円程度にするように計算しています。
そして、
登記費用や不動産取得税などを払えるように110万円までの現金を贈与されうよう提案しています。
≪関連ページ≫
●贈与税がかからない7つの贈与(おしどり贈与)
Q8.孫の教育資金を祖父母が出せば贈与になるのですか?
A8.
本来は贈与ではないので贈与税はかかりません。
ただし、
孫の口座に一旦振込んでプールさせておくとか、孫の親の口座へ振込んだ場合は異なってきます。
「必要な時に必要な額を支払先に直接支払う」ことが、贈与税の対象と税務署に誤解されない為のポイントと言えます。
孫の口座に入金してあげても使途が不明朗な場合や、使い残りがあれば贈与税の対象になってしまうからです。
つまり、
① 学費や入学金、受験代、留学代、修学旅行代などについては、
学校などの振込用紙で祖父母が直接振込先へ振込んでやるとか、
② 孫の毎月の下宿代や塾代などは、
祖父母の口座からの自動引落としにしておけば安心でしょう。
≪関連ページ≫
★ 令和6年(2024年)税制改正 相続税や贈与税、土地譲渡に関するもの抜粋
● 贈与税がかからない7つの贈与(教育資金の一括贈与)
Q9.巷で聞く『教育資金贈与信託』というようなモノは使う必要はあるのでしょうか?
A9.
いいえ、
A1.や A8.でもお答えしていうように、教育資金の提供は、国税庁のホームページでも贈与非課税なので本来はあのような出金する際に面倒な制度を使うことは必須ではないでしょう。まして、改正により相続開始直近3年以内の教育資金贈与信託の内、一定の場合には相続開始時の使い残り金額は相続税の課税対象になりましたので、駆け込み利用は要注意です。
しかし、全く検討価値が無いかというと、そうではありません。
何故かというと、
元来、資金提供や贈与というものは法的には贈与する側の意思能力がある間しか成立しませんので、意思能力が無くなってしまってからの分は支払ってあげられなくなります。
ということは、
祖父母の余命や意思能力に不安が出だしたら、検討する価値は出てくるというわけです。
Q10.子や孫にお金を贈与するかわりに相続の時の財産分けを減らそうと思いますが、どう思いますか?
A10.
相続人の贈与や金銭支援は民法用語で「特別受益」といい、これは、民法上では相続財産の先渡しということになります、が、
あげた際に「受領書」でも取っておかない限り、相続発生時にもらった側が兄弟に言わなければ生前贈与済みであることは、なかなか証明できないのが現実です。
ですから、
弊社では、遺言づくりの際に
「財産分けのつもりで生前贈与した」
旨を記載するように心掛けています。
逆に考えると、
相続対策の為に特定の相続人に知られれば、「特別受益」の考えを楯に遺産分けの協議が紛糾する可能性がある、ということです。
他方、
孫への贈与は相続人宛ての贈与とは違いますので、
「あなたのところの孫に、いっぱい贈与したんだから、
私達が死んだ時の財産分けでは、あなたは少しよ。」
と言う理屈は通用しないので、ご注意ください。
Q11.子や孫が住宅を取得するときの資金の贈与にも非課税制度があると聞きましたが?
A11.
令和5年(2023年)12月末までの間に父母や祖父母・養父母からの贈与により、居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、一定の非課税限度額までは贈与税の申告を条件に贈与税が非課税となります。
もらう側の要件は、次のとおりです。
- ● 贈与を受けた時に受贈者が日本国内に住所を有していること。
- ● 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
- ● 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の住宅の取得の場合は1000万円以下)であること。
- ● 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、
住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。 - ● 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、
又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
≪関連ページ≫
★ 贈与税のかからない7つの贈与(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税)
をご覧ください。
Q12.子や孫の結婚資金や子育て・出産資金の贈与の非課税制度の概要は?
A12.
- ①祖父母・父母が18歳以上~50歳未満の子や孫に対して平成27年(2015年)4月1日~令和7年(2025年)3月末に
- ②結婚に際する婚礼費用・住居費用・引越費用の内、
一定のものに充てる為の贈与(上限300万円) - や、
- ③ 妊娠に要する費用・生まれた子の医療費や保育料のうち、
一定のものに充てる為の贈与(上限1000万円)については、
一定の手続きをすれば贈与税は非課税となる制度です。 - ただし、
- ④ 受贈者が50歳に達する前に贈与者が死亡した場合は、
使い残り部分については、相続・遺贈により取得したものとみなして
相続税が課税されるので注意が必要です (2割増し課税は対象外) - また、
- ⑤ 贈与者の存命中に受贈者が50歳に達した場合は、
使い残り部分については贈与税が課税されるのも要注意です。
但し、
50歳に達する前に受贈者が先に死亡した場合は
贈与税の課税はありません。 - ⑥ 一定の手続きの後、費用支出の都度、
銀行等の営業時間中にわざわざ出向いて
明細書などを提示しないと出金できない為かんり面倒になります。
★ 「非課税贈与」のイメージが先行しますが、使い残り部分には相続税や贈与税が課税されるので、注意が必要です。
そもそも子や孫の結婚・子育て資金、教育資金を必要な都度、必要な額だけ親や祖父母が払ってあげても
常識の範囲内であれば、従来から贈与税は非課税です。
≪関連ページ≫
★ 令和6年(2024年)税制改正 相続税や贈与税、土地譲渡に関するもの抜粋
● 贈与税がかからない7つの贈与(結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税)
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