不動産の相続に必要な手続きとは? 相続登記や遺産分割について徹底解説
相続財産に不動産が含まれている場合、遺産分割が複雑になりやすい傾向にあります。
また、不動産登記などの手続きを行うために、さまざまな必要書類を取得することも必要です。
本記事では、不動産の相続について基本的な流れや各種手続きの方法、必要書類などを解説します。
不動産の相続方法と必要な手続き
親や配偶者など身近な親族が亡くなった場合、その財産を受け継ぐ相続が始まります。
相続財産の中には、実家の家屋とその敷地などが含まれていることもあるでしょう。
土地や建物といった不動産を相続するときには、さまざまな手続きが必要です。
まずは基本的な流れを確認しましょう。
1:遺言書の有無を確認する
被相続人(亡くなった人)が生前に作成した遺言書を探しましょう。
遺言書の有無や内容は相続の進め方に大きく影響するため、他の手続きを始める前に遺言書の有無を確認することが大切です。
2:相続人を確定する
相続人の範囲は民法によって定められており、これを法定相続人といいます。
法定相続人の範囲と順序は、下表の通りです。
順序 | 被相続人との関係 |
常に | 配偶者 |
第1順位 | 子 ※子が亡くなっている場合は、直系卑属(孫、ひ孫) |
第2順位 | 父母 ※父母が亡くなっている場合は、直系尊属(祖父母、曾祖父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹 ※兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥姪 |
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被相続人が死亡した時点の家族構成から、誰が相続人なのかを確定しましょう。
そのためには、次の書類が必要です。
●相続人確定に必要な書類
・被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
被相続人と相続人の関係を証明する情報を「法定相続情報」といいます。
法定相続情報は、相続税の申告や財産の名義変更など多くの手続きに必要なため、その都度、戸籍謄本の束を揃えなければなりません。
そこで、2017年(平成29年)5月に、法定相続情報を法務局で証明してくれるという制度が施行されました。
法定相続情報証明制度
法定相続情報証明制度は、法定相続関係を示す一覧図を作成し関係書類一式と共に法務局に登録するという制度です。
登録された一覧図は、何度でも何枚でも写しの交付を受けられます。
こうすることで、相続に必要な手続きの多くが一覧図の写しで代用できるというわけです。
不動産を相続する可能性がある場合は覚えておくとよいでしょう。
3:相続財産の概要を把握
被相続人の所有財産をすべて洗い出して、財産目録を作成します。
不動産については、毎年4月~5月に市町村から送付される固定資産税納税通知書、登記識別情報通知や登記済証といった権利証で確認する方法が一般的です。
相続放棄・限定承認の選択
相続が開始したとき、相続人には次の3つの選択肢があります。
●相続放棄
被相続人の権利や義務を一切受け継がないという選択
●限定承認
相続によって得た財産を上限として債務の負担を受けるという選択
●単純承認
被相続人の義務も権利もすべて受け継ぐという選択
遺産には、現金や預貯金、不動産などを得る権利だけでなく、借入金や未払金などの債務を支払う義務も含まれます。
被相続人に負債が多く、相続するとかえって損害を受けることがわかった場合などは、相続しないという選択があることを覚えておくとよいでしょう。
相続放棄や限定承認を選択するためには、相続開始から3カ月以内に家庭裁判所にその旨を申述する必要があります。
家庭裁判所に期限伸長の申立てもせず期限を過ぎた場合には、自動的に単純承認を選んだことになり、後から放棄を選ぶことはできません。
4:相続財産を評価
遺産総額を算出するために、相続財産それぞれの価額を決めましょう。
このとき、実際の購入価格ではなく、相続開始時点の時価によって評価する点に注意が必要です。
財産の種類によって評価方法が定められていますので、基本的にはそれに従って評価します。
ただし、土地の評価は複雑で専門知識を必要とするため、土地と相続税にくわしい専門家に任せるほうが安心です。
5:遺産分割
遺産の全容を把握したら、遺産分割を行います。
このとき、遺言書があるなら、基本的にその記載内容に従って遺産を分けるようにしましょう。
遺言書がない場合は、遺産分割協議を開き、相続人全員で誰が何を相続するか話し合います。
不動産の名義変更手続き「相続登記」
不動産を受け継ぐ人が決まったら、忘れずに相続登記を行います。
相続登記は、取得した不動産の名義を変更する手続きです。
名義変更を終えるまでは、書類上は被相続人名義のままということになり、自由に売却することができません。
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●遺産分割や相続登記していない不動産に国が警鐘!相続を放って置くのはNG
6:相続税の申告・納付
相続税の申告は、相続開始から10カ月以内に行う必要があります。
申告書の提出先は、被相続人が亡くなった時点の住所地を管轄する税務署です。
このとき、課税対象となる遺産総額が、相続税の基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人数」を超える場合は、それぞれの遺産取得額に応じた相続税を納めます。
納税期限も申告と同日で、税務書の窓口のほか、全国の金融機関やクレジットカードを利用した納付も可能です。
不動産の遺産分割協議、その他相続方法について
遺産分割の方法は、主に遺言書の有無や相続人同士による話し合いの状況によって異なります。
ここからは、遺産分割協議の手順やその他の選択肢について解説しましょう。
遺産分割協議による相続
被相続人が遺言書を作成していないケースで、相続人が複数いる場合は、誰がどの遺産を受け継ぐか決めるための話し合いを行います。
これを遺産分割協議といい、相続人全員の参加が必須です。
遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意を得た場合には、その内容を書面に書き起こします。
こうして作成した書面に、相続人全員の署名と実印を押すと遺産分割協議書の完成です。
このときに使用した実印の印鑑登録証明書を添付し、相続人数分の写しを作り、各自で保管しましょう。
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●相続の遺産分割の留意点
遺言書のある相続
被相続人が生前に遺言書を作成し、遺産分割について指定していた場合は、基本的にその内容に従います。
このとき注意すべき点は、遺言書では被相続人の任意で遺産の行き先を決められるという点です。
そのため、相続人以外の親族や第三者に遺産を渡す「遺贈」が指定されている可能性も考えられます。
また、遺言書の種類によって発見時の対応が異なるということも覚えておきましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、被相続人が遺言内容を紙に記して作成する遺言書です。
全文を自筆で記すこと、日付および氏名を明記すること、押印をすることが必要な方式で、不備がある場合は遺言書自体が無効となります。
ただし、パソコン等で作成した財産目録や通帳のコピーなどを添付することは可能です。
●自宅保管の遺言書
被相続人の自宅などに保管されていた封のある遺言書を発見した場合は、勝手に開封してはいけません。
未開封のまま家庭裁判所に提出して、検認を受ける必要があります。
検認とは、遺言書の形状や加除訂正の状態などを明確にして、その後の改ざんや偽造、隠蔽を防止するための手続きです。
検認が済むと、遺言書に検認済み証明書が付与されます。
●法務局の自筆証書遺言保管制度を利用している遺言書
自筆証書遺言書保管制度とは、法令上の様式に従って作成された自筆証書遺言を法務局にて保管するという制度です。
この制度では、相続開始後に遺言書の内容を記載した「遺言書情報証明書」の交付を受けられます。
このとき、検認は不要です。
遺言書原本は法務局に保管され続けるため、改ざんや偽造を行うことができません。
また、相続人の誰かが遺言書情報証明書の交付を受けると、あらかじめ登録された相続人全員に遺言書を保管している旨が通知されるため、不都合な内容でも隠蔽はできないという仕組みです。
公正証書遺言
公正証書遺言は、証人2人の立ち会いのもと、遺言内容を公証人に口述、又は書面にて伝える方法で作成します。
作成後は遺言書の謄本・正本が交付され、原本は公証役場で保管されるため、改ざんや隠蔽リスクも回避可能です。
また、遺言能力の確認に公証人が関わることで法的無効リスクや様式不備も低減できるので、もっとも確実な遺言方法だといえるでしょう。
検認手続きも不要で、謄本・正本を発見後すぐに相続手続きを進められます。
法定相続分による相続
法定相続分とは、民法によって定められた相続人ごとの相続割合です。
遺産分割協議がまとまらないままで相続税の法定納期限を迎えてしまった場合でも、納期が延びることはありません。
この場合は、法定相続分で分割したと仮定して申告しますが、配偶者の相続税額軽減や小規模宅地の減額などの特例を受けられないままの相続税額での納税を済ませてから、後日修正申告を行うことになります。
相続する不動産の分け方と、分割できる種類
遺産の中でも、預貯金や有価証券などは現金化しやすく分けやすい財産です。
しかし、不動産は現金化しにくいうえに価値が高く、分けにくい財産の代表格だといえるでしょう。
ここからは、遺産分割における4つの方法を説明します。
現物分割
相続財産そのもの(現物)を相続人に配分する方法です。
例えば、「実家不動産は長男に、株式は次男、預貯金は長女に」のように、遺産の形を変えずに相続を行います。
財産の形を変えずに相続するため、シンプルでわかりやすい方法です。
現物分割の注意点
相続財産が「時価3000万円の不動産、株式と預貯金はそれぞれ500万円分」だった場合は、不動産を得られなかった相続人に不公平感が生まれます。
このとき、物理的に分割できる財産を分けてから相続するケースも、現物分割です。
不動産の場合は、例えば150坪の土地を50坪ずつ境界線で区切って分筆してから、それぞれを相続する方法が該当します。
ただし、不動産の場合、地積が同じでも地型が変われば価値が異なることが多いため、注意が必要です。
代償分割
代償分割は、相続人の1人が不動産を相続する代わりに、価値が釣り合う代償金を他の相続人に支払います。
例えば、「時価3000万円の不動産」を長男が相続する場合、代償金額は次男と長女の相続分に当たる1000万円ずつが妥当でしょう。
次男と長女に不動産を引き継ぐ意思がない場合は、取得金額のバランスが取れているため不満の出にくい方法です。
代償分割の注意点
上記のケースでは、長男は弟妹に対して1000万円ずつ支払うだけの自己資産を持っている必要があります。
また、次男や長女が実家に住み続けたい意思がある場合や時価をいくらと認識するかで代償分割に応じない可能性もあるでしょう。
換価分割
換価分割とは、遺産を現金化してから分割する方法です。
不動産を売却して、その代金を相続分に応じて配分することになります。
物理的な分割が困難で、価値のバランスがとりにくい不動産の相続で選択しやすい方法の1つです。
換価分割の注意点
不動産の条件によっては、なかなか買い手が見つからない可能性も考えられます。
また、実際に暮らしている実家不動産など、手放したくない不動産の場合には使えません。
換価分割のポイントは見つかった買い手の提示額が最高値として納得できるかなので当社ではオークションや競争入札を提案しています。
共有分割
「実家の敷地は、長男と次男とで半分ずつ」など、1つの不動産を複数の相続人で共有する方法です。
遺言書によって特別な相続割合が指定されていない場合は、法定相続分を持分とします。
遺産分割協議が順調に進まなかった場合などに、結果として共有分割になるケースが多いでしょう。
積極的に選択する例としては、被相続人の死亡時に子ども達がまだ幼い場合などが挙げられます。
共有分割の注意点
共有財産は、売却や賃貸などを行う場合に、共同所有者全員の同意が必要です。
相続人が未成年者のうちはよいですが、大人になるにつれ個々の判断で処分できない不自由さに不満を感じるようになるでしょう。
また、共有財産のままで相続人の1人が亡くなると、所有権はその相続人の遺産に含まれます。
つまり、長男と次男で共有しているケースでは、次男が亡くなった場合、その所有権を次男の配偶者や子どもが引き継ぐことになるのです。
そうやって、共同所有者が増え続けるおそれもあるでしょう。
相続登記と必要書類、相続財産について解説
不動産に関連した情報は、法務局の不動産登記簿によって管理されています。
そのため、土地や建物を相続した場合は、不動産登記簿の名義変更手続きが必要です。
この手続きを相続登記といい、2024年(令和6年)4月1日から義務化されています。
●相続登記3つのポイント
・相続登記期限は相続から3年以内
・義務化以前に相続した不動産も義務化の対象 ※登記期限は2027年(令和9年)3月末
・正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料が科される可能性
相続登記の基本的な必要書類(共通)
相続登記は、相続した不動産を管轄する法務局に登記申請書と必要書類を提出します。
このとき、遺産分割方法によって必要書類が異なる点に注意が必要です。
相続登記に必要な書類を、遺産分割方法ごとに紹介します。
基本的な必要書類(共通)
まず、遺産分割方法にかかわらず共通して必要な書類は以下の通りです。
●申請を行うための書類
・登記申請書
・相続人の固定資産課税明細書(登記申請日の属する年度のもの)
・新しく所有者になる相続人の住民票
登記申請書は、法務局ホームページの申請書様式ダウンロードページより入手できます。
●相続情報を証明する書類
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(全部事項証明書)、除籍謄本、改製原戸籍など
・被相続人の住民票除票、または戸籍の附票 ※登記上の住所と本拠地の記載があるもの
・相続人全員の戸籍謄本(抄本、戸籍事項証明書)
これらの法定相続情報書類は、「法定相続情報一覧図」によって代用可能です。
分割方法によって異なる書類
次に、遺産分割方法ごとの書類を紹介します。
●遺産分割協議による相続登記
・相続人全員が実印を押した「遺産分割協議書」
・相続人全員分の押印した実印についての印鑑登録証明書
●遺言による相続登記
・公正証書遺言の正本または謄本
・自筆証書遺言書(自宅保管)と家庭裁判所の検認証明書
・遺言書情報証明書(法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用の場合)
遺言書が複数ある場合は、様式にかかわらずもっとも日付が新しいものが有効です。
●法定相続による相続登記
法定相続の場合は、共通書類以外に用意すべき書類はありません。
不動産相続のお困りごとは、相続の専門家にご相談ください!
不動産を相続する場合、いくつかの難所を越える必要があります。
1つ目は、土地の評価の難しさです。
図面上の数字から単純に計算できるものではないため現地検分が必要ですが、土地と相続税務双方における専門の知識がなければ適切な評価は行えません。
次に、遺産分割の難しさが挙げられます。
本記事では遺産分割の手順や方法について具体的にまとめましたが、そこからも一筋縄ではいかないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
不動産が遺産の大半を占めているというケースなど、話し合いがスムーズにいかない可能性が高い場合は事前に専門家に相談することをおすすめします。
また、相続税の申告書類や相続登記の書類などを作成する際にも、一定の法律知識は必要です。
何よりも、遺産に不動産が含まれる場合は、遺産分割内容で各相続人の相続税額にかなりのバラつきが出るにもかかわらず、相続の発生から10カ月という短い時間で、遺産の調査から評価、分割まで終えるという難しさが有ります。
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