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法定相続分の割合について詳しく解説

法定相続分とは民法が定める遺産分割の割合で、法定相続人の組み合わせによって決められています。
ただし、遺言書がある場合や遺産分割協議を行う場合は、法定相続分以外の方法で割合を計算したり取得財産を指定したりしてもかまいません。

この記事では、遺産分割の方法と法定相続分の関わりかた、遺言書の効果について詳しく解説します。

法定相続分とは「民法に定める遺産分割の目安」

法定相続分とは「民法に定める遺産分割の目安」

法定相続分とは、民法によって定められた遺産相続における分割の目安となる数値です。
財産を所有する人が亡くなったとき、その遺産を受け継ぐための手続きである「相続」が始まります。
相続人が複数人数いるケースでは、誰がどの相続財産を受け取るかを決めなくてはなりません。
それを遺産分割といいます。

遺産分割を決める3つのポイント

遺産分割方法を考えるときに重要なポイントが、次の3点です。
優先順位の高い順に紹介しましょう。

ポイント1:遺言書の有無

遺言書では、遺産分割の分け方や割合の指定、受取人の指名などを自由に行えます。
遺言書は、被相続人(亡くなった人)の意思を伝える最後の手段です。
そのため、被相続人が生前に遺言書を作成していたケースでは、基本的にその内容に従った相続を行います。

ポイント2:遺産分割協議

遺産分割協議とは、被相続人にとっての相続人全員で誰がどの遺産を受け取るか話し合うことです。
遺言書がないケース、あるいは遺言書に記載のない財産について、遺産分割協議を行います。
相続人全員が合意して遺産分割協議が成立した場合は、その内容を明記した遺産分割協議書を作成します。

ポイント3:法定相続

法定相続とは、法定相続分を用いた遺産分割方法です。法定相続分は他の法定相続人などに有償・無償で譲渡することができます。又、家庭裁判所で正式な放棄をした人がいる場合はその人が最初から居なかったものとしての法定相続分になります。
遺言書がなく、遺産分割協議が難航している場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることができます。
調停では、各相続人の事情を聴取し考慮しつつも、基本的には法定相続分による遺産分割を進める方向で話がまとめられることが多いでしょう。法定相続人が過去に生前贈与などの特別受益があった場合はその分を考慮するケースもあります。
家庭裁判所の調停や審判、あるいは相続人の選択によって法定相続分で遺産分割を行うことを、法定相続といいます。

法定相続分は相続の目安

法定相続分は相続人の組み合わせによって決められており、その割合は下表の通りです。

●法定相続分一覧表

相続人の組み合わせ 法定相続分
配偶者のみ 配偶者:全部
配偶者+子ども 配偶者:2分の1、子ども:2分の1
配偶者+父母 配偶者:3分の2、父母:3分の1
配偶者+兄弟姉妹 配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1
子どものみ 子ども:全部
父母のみ 父母:全部
兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹:全部

子どもや父母、兄弟姉妹が複数人数いる場合は、それぞれの割合の範囲内で均等に分けます。

法定相続分は、法律によって定められていますが強制力はありません。
あくまでも、遺産分割を行う際の「目安」です。
被相続人が遺言書で指定する際は、法定相続分に準ずる必要はなく、自由に設定することができます。
また、遺産分割協議において相続人全員が合意する場合も、法定相続分以外の分け方を選択可能です。

法定相続分がもらえる人の範囲

法定相続分がもらえる人の範囲

法定相続分の対象は、相続人です。
被相続人の親族や血族のうち、誰もが相続人になれるわけではありません。
その範囲や順序を法律によって定められており、その性質から「法定相続人」とも呼ばれています。

法定相続人の条件とは

相続の目的の1つは、遺族の生活保障です。
そのため、亡くなった人の働きや資産が生活に直結すると考えられる配偶者や子どもは、優先的に相続人となります。

●常に相続人:配偶者
被相続人の配偶者は、他の親族の有無にかかわらず相続人です。
ただし、戸籍上の婚姻をしている相手に限られています。
内縁関係の相手や事実婚パートナーなどは、同じ家に住み生活を共にしていても法律上の配偶者とは認められません。

配偶者以外の血族・親族は、配偶者と一緒に相続人となります。
その順序は下記の通りです。

●第1順位:子ども
被相続人の子どもは、第1順位で相続人となります。
戸籍上の親子関係があれば、実子・養子は問いません。
非嫡出子がいるケースでは、認知・分娩の事実によって法律上の親子関係が成立します。
なお、法律上の親子関係がある者同士は、血の濃さや生まれた順番にかかわらず同列です。
相続開始より前に亡くなっている子どもがいる場合は、代襲相続としてその直系卑属(孫・ひ孫)が相続の権利を承継します。

●第2順位:父母
被相続人に子どもや孫が1人もいない場合は、父母が相続人です。
両親とも亡くなっている場合は、その直系尊属(被相続人の祖父母・曾祖父母)が相続人となります。

●第3順位:兄弟姉妹
代襲相続人も含め第1順位・第2順位の相続人が誰もいないときは、被相続人の兄弟姉妹が相続人です。
兄弟姉妹のうち、相続開始よりも先に死亡した人がいる場合は、その直系尊属(被相続人の甥姪)が代襲相続人となります。

法定相続分がもらえない人は?

法定相続分がもらえない人は?

原則として、法定相続分あるいはそれ以外の配分で相続する権利を持つ人は相続人のみです。

しかし、相続人の権利を持っている人でも、相続できないというケースもあります。
ひとつは相続人自らが相続を放棄したケース、もうひとつは相続人の権利を剥奪されるケースです。

相続の承認と放棄

相続は、相続人の意思で「する・しない」という選択をする機会があります。
相続に関する権利を一切手放す選択が、相続放棄です。

●相続放棄
相続では、被相続人の財産を継承する権利と負債を返済する義務を受け継ぎます。
被相続人の債務が多い場合は、相続することでかえって損害を受けるケースもあるでしょう。
そのようなときは、家庭裁判所で相続放棄の申述を行うことで、一切の相続権を手放す代わりに負債から免れることが可能です。

●相続放棄の期限
相続放棄をする場合、相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所に申述を行う必要があります。
口頭で「相続しない」と伝えるだけでは、正式な相続放棄にはなりません。

相続人廃除と相続欠格

相続の権利を持っている人でも、下記のケースに該当すると相続の権利を失います。

推定相続人の廃除

推定相続人とは、被相続人の生前において「現状で考えると法定相続人になるはずの人」です。
次に挙げる廃除理由に該当する場合は、被相続人の意思に基づいて将来の相続権を剥奪することができます。

●廃除理由
①推定相続人が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を与えたとき
②推定相続人に、著しい非行(道理や道徳に外れた行為・不正行為)があったとき

●廃除の手続き
推定相続人の廃除は、被相続人自らが次のいずれかの請求手続きを行う必要があります。
①家庭裁判所に推定相続人の廃除申述を行う
②遺言書に廃除の請求を明記する

相続の欠格

次の欠格事由に該当する場合、相続人の相続権は剥奪されます。
このとき、手続きは不要です。

●欠格事由
①故意に、被相続人や他の相続人を死亡させた者、死亡させようとした者
②被相続人が殺害されたことを知って、告発や告訴をしなかった者
③詐欺や強迫によって、被相続人の遺言作成・撤回・取消・変更に影響を与えた者
④被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

代襲相続への影響

代襲相続とは、相続人が何らかの原因によって相続できなかった場合に、その直系卑属が不利益を受けないようにするための制度です。
そのため、相続人となるべき人が相続開始以前に亡くなっている場合だけとは限りません。

●代襲相続の要件
①被代襲者(相続人)の相続開始以前の死亡(同時死亡を含む)
②被代襲者の廃除
③被代襲者の相続欠格

相続放棄者の子は代襲相続できない

ただし、相続人が相続を放棄した場合は、その直系卑属への代襲は行われません。
これは、代襲によって債務の返済義務などが直系卑属に降りかかることを避ける意味もあります。

相続放棄は、一度成立すると撤回不可能です。
正しく理解しておかないと、「自分の子どもに譲るつもりで放棄したら、自分も子どもも相続権がなくなってしまった」という羽目に陥りかねません。
十分に注意しましょう。

法定相続分と遺留分の違い

法定相続分と遺留分の違い

遺留分とは、相続人の相続する権利を守るために認められている最低限の取り分のことです。
遺留分の割合は法定相続分を基準として、下記のように定められています。

●法定相続分と遺留分割合

相続人の組み合わせ 法定相続分 遺留分
配偶者のみ 配偶者:全部 配偶者:2分の1
配偶者+子ども 配偶者:2分の1、子ども:2分の1 配偶者:4分の1、子ども:4分の1
配偶者+父母 配偶者:3分の2、父母:3分の1 配偶者:6分の2(3分の2)、父母:6分の1
配偶者+兄弟姉妹 配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1 配偶者:2分の1、兄弟姉妹:なし
子どものみ 子ども:全部 子ども:2分の1
父母のみ 父母:全部 父母:3分の1
兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹:全部 兄弟姉妹:なし

遺留分侵害額の請求

遺言書では、法定相続分にとらわれず、自由に遺産分割方法を指定することができます。
また、相続人以外の親族や第三者に財産を渡すよう指定することも可能です。
しかし、その結果、相続人の取り分が少なくなってしまうこともあるでしょう。

自分の取り分が遺留分割合よりも少ない相続人は、不足分を取り返す権利を行使することができます。
遺留分侵害額の請求を行う相手は、まず相続以外の方法で財産を得た相手、次に遺留分よりも多く財産を取得した相続人です。

法定相続分と遺留分の違い

法定相続分は、あくまでも目安の数字であり、必ず従わなければならないわけではありません。
しかし、遺留分とは相続人の権利です。
遺留分を侵害された相続人が請求を起こした場合、請求を受けた人は侵害額を支払わなければなりません。
その際、基本的には金銭で支払うこととされています。
ただし、遺留分権利者との話し合いによって合意があれば、受け取った遺産の返還や分割払などが認められる場合もあるでしょう。現金以外で支払う場合は譲渡所得税を払わなければいけないケースもあるので注意が必要です。

法定相続人ではない人が遺産を相続することはできる?

法定相続人ではない人が遺産を相続することはできる?

相続は、相続人だけに認められた権利です。
また、相続権を持つ人の範囲・順序は民法によって明確に決められています。

もしも、相続人以外の親族や第三者に財産を渡したい場合は、相続以外の方法を考えなくてはなりません。

法定相続人以外に財産を渡す方法

相続人以外に財産を渡す方法は、次のようなものが挙げられます。

生前贈与

生前贈与とは、被相続人が生きているうちに財産を贈与することです。
贈与する側が生存しているため、意思を反映するための最も確実な方法でしょう。

死因贈与

死因贈与は、「被相続人(贈与者)の死後に贈与を行う」という条件付きの贈与契約です。
双方合意のもとで契約成立しているため、実行時に受贈者が拒否することはできません。

遺贈

遺贈とは、被相続人が遺言書によって遺産の受け取り相手を指名することです。
遺贈では、相続人を含む親族や第三者に対して財産を渡すことができますが、一般法人に対するお金以外の遺贈は準確定申告で譲渡所得税が課され、又、法人側は法人税が課されるケースが一般的です。
また、遺言書の特性上、被相続人が亡くなるまで遺贈の事実を周囲に秘密にしておくことが可能です。
なお、遺贈を受ける人(受遺者)は、自分の意思で受け取りを拒否することもできます。

相続との違い

生前贈与・死因贈与は、贈与者と受贈者の双方が合意していなければ行われません。
遺贈は、被相続人が作成した遺言書が必要です。
相続は、被相続人が亡くなった時点で自動的に始まります。

つまり、何らかの準備をしておかなければ、相続人以外に財産を渡すことはできないというわけです。
相続人以外に渡したい財産がある場合は、早めに対処しておきましょう。

遺産分割はトラブルを避けるために遺言書の作成が良い

遺産分割はトラブルを避けるために遺言書の作成が良い

相続人が1人というケースでは、遺産を分割する必要がありません。
また、配偶者と幼い子どもの2人だというケースでは、相続トラブルが生じる可能性が低いでしょう。
しかし、相続人の数や構成によっては、話し合いがスムーズにいかないおそれがあります。
これまで仲のよかった家族でも、お金が絡むことで関係が悪化するというのはよくある話です。
また、幼かった子どもが成人してそれぞれに家庭を持つようになることで、考えが変わることもあるでしょう。

相続にまつわるトラブルを回避するために有効な手段のひとつが、遺言書の作成です。

遺産分割トラブルと遺言書の活用例

ここでは、遺産分割で生じやすいトラブルと遺言書の活用法について具体例を紹介します。

①子どものいない夫婦である

子どものいない夫婦で、片方が亡くなった場合に相続人となるのは配偶者と、被相続人の直系尊属あるいは兄弟姉妹です。
双方の関係性によっては、なかなか遺産分割協議が成立しない可能性があるでしょう。

予め、誰が何を受け取るかを明確に指名する遺言書を作成しておけば、遺産分割協議を行う必要はありません。
遺留分に配慮して、配偶者以外にも適切な額の遺産を指定することで、遺留分侵害リスクも回避できます。

②事実上の家族がいる

入籍や養子縁組を行っていない事実上の家族には、相続する権利がありません。

しかし、遺言書によって遺贈を指定すれば、内縁の妻や再婚相手の連れ子にも財産を残すことができます。
他に相続人がいる場合は、遺留分に気をつけましょう。

③分割しにくい遺産が多い

預貯金や有価証券などの金融資産と違い、土地や家屋といった不動産は分割しにくい財産です。
遺産の大半を自宅不動産が占めているケースでは、どうしても相続人ごとの取得金額が偏り、トラブルを招きかねません。
さらに、自宅不動産は被相続人の死後も配偶者や子どもが居住していることがあり、売却による現金化も難しいでしょう。

配偶者に自宅を相続させないケースでは、遺言書による配偶者居住権の設定が有効です。

●配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、不動産の価値を所有権と配偶者の居住権に分けて考えるという制度です。
これにより、所有権は長男が相続しつつ、配偶者は生涯あるいは任意の期間、自宅に住み続けることができます。
また、不動産の評価額も所有権と居住権に分かれるため、相続人間の取得財産バランス調整や相続税の軽減にも役立つでしょう。
配偶者の死後、配偶者居住権は消滅するため相続税がかかりません。
配偶者居住権の設定は、現在の相続だけでなく、将来発生する2次相続での節税効果もある画期的な方法です。

遺言書作成のルール

遺言書には、法律によって定められた厳密な方式があります。
ルールに則っていない遺言書は、残念ながら法的な効力を発揮することができません。
基本的な方式は、下記の通りです。

●主な遺言書の方式:自筆証書遺言

概要 遺言書の全文、日付、氏名を自筆で記し、実印を押して作成
※財産目録部分はパソコン作成可、通帳コピー可
作成者 被相続人(遺言者)
保管先 遺言者が管理、または法務局の遺言書保管制度を利用
費用 無料、あるいは遺言書保管制度を利用する際は3900円/件
メリット 思い立ったときに、自分1人で気軽に作成できる
デメリット チェック機能がないため不備・無効リスクが高い

●主な遺言書の方式:公正証書遺言

概要 証人2人の目前で遺言者が遺言内容を公証人に口授し、公証人がそれをまとめて作成
作成者 公証人
保管先 公証役場
費用 遺言で扱う財産額に応じた手数料等
メリット 法律に詳しい公証人が立ち会うことで不備・無効リスクが低い
デメリット 準備が必要、費用がかかる

法定相続分や遺言書の作成について無料相談

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寺西 雅行

この記事を監修した専門家

寺西 雅行

税理士法人プラス 代表税理士
(株)相続ステーション 代表取締役
行政書士法人サポートプラス 代表行政書士

1962年生 同志社大学卒業。学生時代から25才までの間の3度の相続で自身が相続納税や借地人・借家人・農地小作人との折衝に苦労した経験から、不動産に詳しい相続専門税理士の必要性を痛感。
税理士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、ライフコンサルタント(生命保険)、証券外務員資格、M&Aスペシャリストの8種類の資格を有する相続・遺言・後見・不動産など財産に関する総合エキスパートとなる。
弁護士・会計士・税理士からの業務依頼や銀行からの相談、TVメディアからの解説依頼多数。

著書『相続専門の税理士だから言えるリスク回避の処方箋』
『相続トラブルSOS~専門の税理士がやさしく解説~』
『相続119番~誰にも聞けなかった相続の悩みを一挙に解決!』

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