遺産分割の解決方法とは 手続きや流れ、親族と揉めないために分かりやすく解説
遺産分割とは、個人の財産を相続人などで分ける手続きのことです。
一口に遺産分割と言っても、遺言の有無や分割の方法、相続税の金額は状況によって異なります。
遺産分割協議がうまくまとまらずに、揉めたりトラブルになったりするケースもあるでしょう。
本記事では、遺産分割を行う場合にはどのような手続きをしたら良いのか、遺産分割の手続きやその流れ、スムーズに行うためのポイントなどを解説します。
遺産分割とは? 遺産の具体的な分け方

遺産分割にはさまざまな方法がありますが、まずは遺言書の有無によって大きく異なるのがポイントです。
まず、遺言書で分割方法が指定されている財産は、原則として遺言書の内容の通りに分割します。
遺言書の中に遺贈を行う旨の記載をすれば、法定相続人以外にも財産を譲ることが可能です。
遺言書がない場合や遺言書に書かれていない財産は、基本は遺産分割協議によって遺産分割を進めましょう。
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産分割について話し合いを行うことです。
もし遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。
遺産分割の種類
遺産分割には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」と4種類の分割方法があります。
それぞれ例を挙げながら解説していきましょう。
●現物分割
預金なら預金、土地は土地など、相続財産をそのままで分けることを現物分割と言います。
例えば、故人の子であるA・B・Cの3人が相続人となる場合、「Aが〇〇銀行の口座預金、Bが〇〇番地の土地、Cが株式」など、特定の財産を特定の相続人がそのまま相続する方法です。
●代償分割
相続人のうちの1人が不動産などの価値の高い財産を取得したとき、他の相続人に対して相当分の差額を現金等で支払う方法が代償分割です。
例えば、故人の子であるA・B・Cの3人が相続人となり、Aが自宅(価値3000万円)を取得した場合、AはBとCに対してそれぞれ1000万円ずつ現金で支払います。
●換価分割
換価分割は、相続財産を現金化してから分配する方法です。
不動産の場合は、一度相続人の名前で相続登記を行った後で売却し、その売却金を相続人で分けます。
例えば、故人の子であるA・B・Cの3人が相続人となり、自宅だけが相続財産としてあった場合、自宅を3000万円で売却したのち、A・B・Cがそれぞれ1000万円ずつ現金でもらいます。
換価分割についてはリンク先の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
≪関連ページ≫
●換価分割とは 遺産分割での手続きや遺産分割協議書の書き方をわかりやすく解説
●共有分割
遺産を複数いる相続人の共有名義にし、共有して相続する方法が共有分割です。
例えば、故人の子であるA・B・Cの3人が相続人となり、自宅だけが相続財産としてあった場合、共有分割では自宅の持ち分をA・B・Cがそれぞれ3分の1ずつ所有する形になります。ただし、相続後に維持費の負担や活用・売却を巡って共有者同士の意見が合わない等、トラブルになりやすい傾向があるため注意が必要です。
遺産分割を行うための流れと手続き

遺産分割を行うための手続きについて、流れに沿って解説します。
1.遺言の有無の確認
相続が発生したら、まずは遺言の有無を確認しましょう。
遺言書がある場合、遺言書があることを知った相続人は、他の相続人にもその旨を知らせる必要があります。
なお、自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合は自宅に保管されていることが多く、公正証書遺言の場合は被相続人が正本を保管、原本は公証役場に保管されています。
自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認が必要です。
開封後は遺言執行人が相続財産の分配などの手続きを行います。
遺言書が残されていても、相続人と受遺者全員が同意した場合には遺言の内容と異なる分割をしても構いません。
遺言書がない場合や遺言書が無効であった場合には、遺産分割協議にて分割内容を決めます。
2,相続財産の確認
まず、遺産の総額がどのくらいあるのかを調べます。
遺産に含まれるのは預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの資産も含まれるのが注意点です。
故人が所有していたすべての財産を洗い出した上で、遺産分割の手続きを行いましょう。
3.相続人の確定
遺産分割協議の前に、相続人を確定させます。
遺言書がない場合、法定相続人が相続人となるのが基本です。
ただし、家族も知らなかった相続人がいるケースもありますので、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めて相続人を確定させましょう。
遺産分割協議が終わった後にほかの相続人がいたことが判明した場合、遺産分割協議はやり直しとなるため注意が必要です。
なお、連絡が取れない相続人がいる場合には、その居所を探して相続発生の旨を知らせる必要があります。
4.遺産分割協議
相続人全員で遺産分割について話し合いを行います。
一堂に会する必要はないため、遠方に住んでいる等で対面が難しい場合には書面でのやり取りでも問題ありません。全財産を一括して分割協議でまとまらないのであれば、部分的でも構いません。
遺産分割協議は、全員で納得して解決しようとする姿勢が大切です。
なお、遺産分割協議で話がまとまらない場合や揉めてしまった場合や分割協議に参加しようとしない相続人が居る場合は、遺産分割調停や遺産分割審判の申立を家庭裁判所に行うことができます。
5.遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で話し合った内容をまとめたものが「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書に特別決まったフォーマットはなく、作成自体は義務ではありません。
しかし、後々のトラブル防止のためにも作成しておくのが良いでしょう。
遺産分割協議書は、不動産相続登記や銀行預金の名義変更など、相続の手続きで提出が必要になりますので、書き方には注意が必要です。
遺産分割の仕方で相続税は変わる。シミュレーション別でご紹介

相続が発生した場合にかかるのが相続税です。
相続税は、2000万円もらったらいくら、4000万円もらったらいくら、といった単純な税計算ではありません。
相続税は遺産の分け方や内容によって変わりますので、相続税の計算方法を覚えておくと良いでしょう。
相続税の計算
まずは相続税の計算について解説します。
相続税は以下の3つのステップで計算しましょう。
ステップ1:課税遺産総額の算出
まずは、墓石や墓地などの一部の非課税財産、葬式費用や債務等を除き、預貯金や株式、現金、不動産など故人の財産をすべて含めた遺産総額から、基礎控除額を引いて課税遺産総額を出します。
2025年4月現在の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
なお、控除額の計算をする際、相続放棄をした人も法定相続人にカウントできます。
課税遺産総額がプラスになった場合のみ、ステップ2へ進みましょう。
ステップ2:法定相続分から、相続税総額を算出
課税遺産総額が出たら、その額を法定相続分で按分します。
例えば被相続人の配偶者Aと長男B・次男Cの3人が相続人である場合には、Aが2分の1、BとCがそれぞれ4分の1ずつとなります。
按分したそれぞれの額に定められた税率をかけて控除分を引き、各人の相続税額を算出しましょう。
≪関連ページ≫
●相続税の税率は?計算方法を解説
ステップ3:実際の取得額に応じ、相続税額を計算
ステップ2で出した各人の相続税額を合算したものが相続税額の総額です。
相続税額の総額を、実際に相続する割合で分配することで、各人が支払う相続税額が算出されます。
なお、配偶者の場合は1億6000万円、または配偶者の法定相続相当分のどちらか多い額までは申告することにより相続税はかかりません。
その他にも控除や特例を適用できるケースがありますので、該当する場合は忘れないよう注意してください。
相続税のシミュレーション
それでは具体的な例を挙げて、相続税の計算についてシミュレーションをしてみましょう。
例:遺産総額1億2000万円を、故人の長男A、次男B、三男Cが相続する場合
例では法定相続人がA・B・Cの3人のため、相続税の基礎控除4800万円を差引いて課税の対象となる遺産総額は7200万円です。
これをステップ2の方法で按分すると、3分の1ずつの2400万円になります。
それぞれに対応する税率・控除を適用すると相続税は各310万円となるため、このケースの相続税合計額は930万円です。
これを実際に相続する割合で分配します。
事例を挙げて計算してみましょう。
【事例①】法定相続分どおりの相続をする場合
今回のケースでは法定相続分は各3分の1となるため、930万円を3分の1ずつ分配します。
したがって、A・B・C全員の相続税は各310万円です。
【事例②】Aが2000万円、Bが6000万円、Cが4000万円を相続する場合
この場合、実際に相続する割合は、Aが6分の1、Bが6分の3、Cが6分の2となります。
取得額に応じた各人の相続税額=相続税総額 × (実際の取得額 ÷ 遺産総額)となるため、算出すると各人の相続税額は次の通りとなります。
A:930万円×(2000万円÷1億2000万円)=155万円
B:930万円×(6000万円÷1億2000万円)=465万円
C:930万円×(4000万円÷1億2000万円)=310万円
遺産分割をすれば法定相続分と異なる割合でもOK?

遺産分割協議において、全員が納得していれば法定相続分と異なる配分でもOKです。
例えば、配偶者Aと長男B、次男Cの3人で相続する場合、法定相続分ではAが2分の1、BとCが4分の1ずつとなります。
しかし遺産分割協議にて、Aが6分の3、Bが6分の2、次男Cが6分の1とするなど、法定相続分と異なる分配が行われることもあるでしょう。
遺産分割協議によって決まった内容が、法定相続分と異なるケースは少なくありません。
相続人同士で納得できていれば、どのような割合で分けても大丈夫です。
ただし、被相続人が遺言書にて禁じている場合には、最長5年以内の遺産分割ができないこともありますので注意してください。
≪関連 詳細ページ≫
●遺産配分のベストミックスなどで相続税を節税
●居住利用・事業利用している不動産の遺産分割方法の提案
●相続評価以外の価値や、生前贈与・介護などの寄与分も考慮した遺産分割の提案
遺産分割協議書とは 作成方法や親族と揉めた際の対処方法

遺産分割協議によって全員が納得する結果が出たら、その内容を遺産分割協議書にまとめましょう。
本項では遺産分割協議書の作成や親族と揉めた際の対処法について解説します。
遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で話し合った結果を書面にまとめたものです。
誰がどの財産をどのくらい相続するのかを細かく記載します。
税理士、弁護士、司法書士に書類の作成を依頼するほか、自分で作成しても構いませんが、相続税がからむ財産ボリュームがあるなら、最初から相続税に馴れた税理士の方が良いでしょう。
遺産分割協議書に決まった様式はありませんが、以下の点は記載しておくと良いでしょう。
・被相続人の情報(氏名、生年月日、死亡日、死亡時の住所)
・相続人全員が合意した旨
・分割する相続財産の詳細(不動産は地番や家屋番号、預貯金なら銀行名と口座番号など)
・遺産分割協議書作成後に新たに見つかった相続財産の取り扱い方
・相続人全員の住所、氏名と実印
・作成日付
遺産分割協議書には作成期限はありません。
ただし、相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」となっているため、せめて数ヶ月の余裕は残して、できるだけ早めに作成することをおすすめします。
なお、数次相続が起きた場合には権利関係などを含め、手続きが複雑になる傾向があります。
数次相続における遺産分割協議書の書き方などは以下のリンク先の記事にてご紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
≪関連ページ≫
●遺産分割協議の提案/数次相続(続けて相続発生)の遺産分割協議
親族と揉めた際の対処方法
相続を巡り、親族間で揉めてしまうケースは少なくありません。
特に日頃からあまり連絡を取り合っていない相続人同士では、話し合いが進まないこともあるでしょう。
できるだけ円満に解決したいものですが、もし揉めてしまった場合には第三者に仲介してもらうことで話を進めることもひとつの手です。但、法的に代理交渉できるのは弁護士に限られます。
遺産分割協議で解決できない状態となった場合には、弁護士に交渉代理を依頼する解決方法のほか、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申立てる方法もあります。
遺産分割での協議が不成立やその他注意点

遺産分割協議がまとまらないときや、遺産分割における注意点を解説します。
遺産分割協議が不成立の場合
遺産分割協議で話がまとまらなかった場合には、遺産分割調停や遺産分割審判の申立てが可能です。
遺産分割調停とは、遺産分割協議がまとまらない場合に、家庭裁判所の調停委員が入って話し合いを行う方法です。
それでも解決できない場合などには、家庭裁判所の審判で解決する遺産分割審判が行われます。
遺産分割調停や遺産分割審判をする場合には、家庭裁判所に申立てをしましょう。
遺産分割における注意点
遺産分割においてはやってはいけないことがあります。
ついやってしまいがちなこともありますが、後々のトラブルの原因にもなりますので注意が必要です。
・遺産を勝手に使う
遺産分割協議中は、被相続人の遺産を勝手に使ってはいけません。
預金の引き出しを勝手に行うと、他の相続人の相続分を侵害したとして、不当利得の返還請求をされる可能性があります。
・財産の処分
空き家になってしまったとしても、不動産の売却などを勝手にしてはいけません。
遺産分割協議中に遺産の売却を行うと法定単純相続となり、遺産相続したことになります。
借金があった場合にも放棄できなくなるため気をつけましょう。
・遺言書の開封
封印されている自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、開封の際に検認の手続きが必要です。
勝手に開封すると法律違反として罰金を科されることがありますので注意しましょう。
・嘘をつく、感情的になる
遺産分割協議の場では嘘をつくことや感情的になることはやめましょう。
遺産分割調停においては、冷静な話し合いができないと判断されると不成立になり、審判への移行をうながされます。
また、相続が発生した旨を特定の相続人に知らせないようにすることもやってはいけないことです。
遺産分割では、公平かつ円滑な話し合いができるように心がけるようにしましょう。
遺産分割での解決事例をご紹介

遺産分割での揉めごとやトラブルにはさまざまなケースがあります。
遺産分割における解決事例をご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
事例①:遺産に現金が少なく相続税が払えないケース
故人の遺産総額は1億円だったが、ほとんどが不動産で現金は100万円だった。
≪関連 詳細ページ≫
●遺遺産分割協議の提案/相続納税を意識した遺産分割の提案・相続税連帯納付義務の驚異
配偶者と長男の2人が相続人であり、長男は315万円の相続税を納付する必要があるが、現金での相続税一括納付が難しい。
【解決策】
故人が残した不動産は配偶者・長男ともに取得を希望していなかったため、換価分割を選択。
不動産を売却して現金化した後に分配し、その金額で相続税を支払うことができました。
この場合、不動産のまま相続してその後に売却することで、相続税の節税効果も得られるメリットがあるのもポイントです。
事例②:遺留分侵害額請求を受けたケース
法定相続人は長女と次女の2人であったが、故人は遺言書にて、長年同居し介護してくれた長女に不動産を含むすべての財産を譲ると記していた。
ところが次女はそれを不服として遺留部侵害額請求をしてきた。
長女は、遺留分を払う意思はあるが、支払う金額を安くしたいと考えている。
【解決策】
遺留分は法定相続分の2分の1を請求できるため、この事例②のケースで次女が請求できるのは遺産総額の4分の1です。
遺留分として長女が次女へ支払う金額をできるだけ下げるには、不動産の時価評価がポイントになります。
長女は税理士に依頼して適正な不動産評価額を算出してもらい、その金額をベースに交渉することを試みました。
介護をしてきた事情などを踏まえて話し合った結果、提示した不動産評価額にて納得を得て、「遺留分侵害額支払合意書」を締結。
お互いに冷静に話し合えたこと、信頼に値する不動産評価額を適正に算出・説明できたことが解決の糸口となった例です。
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遺産分割をスムーズに行うには、日頃からよく家族で話し合っておくことが大切です。
もし相続が発生したらどうするか、誰がどの財産を引き継ぐのかなど、あらかじめしっかりと決めておくことで、万が一の場合のトラブル防止にも役立つでしょう。
しかし、いくら事前に用意していたとしても親族間で揉めたりトラブルが起きたりする可能性はあります。
遺産分割の内容だけでなく、相続の際に不利にならないためにはどうしたら良いか、他の相続人と疎遠である場合の対応方法など、心配になることもあるでしょう。
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