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生前贈与で現金を手渡しする場合の注意点

現金の手渡しによる生前贈与には税金がかからないと思っている人がいます。
しかし、きちんとした証拠を残さない贈与は、かえって税務署による調査を受けるリスクを高める可能性があるでしょう。

本記事では、贈与税の未納が税務署にバレる理由とそのペナルティを紹介し、非課税制度を活用した有効な相続税対策の方法と注意点について、詳しく解説します。

生前贈与とは

生前贈与とは

生前贈与とは、財産の所有者個人が生きている間に、家族などに無償で財産を譲ることです。
相続税を軽減させるために財産高を減らしておく「節税対策」として行われることも少なくないでしょう。

ただし、贈与にも贈与税がかかる点に注意が必要です。

贈与税と相続税では税率だけでなく計算過程も異なります。
そのため、同じ財産価額でも、かかる税額に差が生じるでしょう。
生前贈与と相続の特徴や税額を踏まえ、どちらの方法で財産を渡す方が得なのか慎重に検討することが重要です。

生前贈与で現金を手渡ししても認められる?

生前贈与で現金を手渡ししても認められる?

生前贈与の方法として、現金を手渡しすることは法的に何ら問題ありません。
しかしながら、もしも「現金の手渡しは証拠が残らないから、贈与税を払わなくて良い」と考えるのは大きな誤解です。

税務署には高い調査能力がある

税務署は、過去の納税記録や金融機関の取引情報を確認する権限を持っています。
給与や事業所得はもちろん、不動産や有価証券の売買や、口座を通じた支払いなども、簡単に把握できるのです。

現金での手渡し贈与といっても、その現金は財産の送り手(贈与者)が銀行などに持つ預貯金口座から出金されたものではないでしょうか。
最初から、金融機関をまったく通さない資金というものは、なかなかありません。

つまり、贈与者が「お金を引き出していた」という情報は、税務署に筒抜けだと思ったほうが良いでしょう。

受贈者も税務署の調査対象

次に確認すべきは、贈与者のお金の行方です。

手渡しで現金を受け取った受贈者は、そのお金をどうするでしょうか。
不動産や自動車など高額商品を購入したり、教育機関の入学費用に使ったり、受贈者名義の銀行口座に預け入れたりするでしょう。

受贈者自身の所得の流れとは異なる資金が現れた場合、「その出所はどこだ?」という疑問を持たれるのは当然です。

手渡しによる贈与は税務調査リスクが高い

税務署職員による調査では、出所不明の資金について「これは、どうなっていますか?」と尋ねられるでしょう。

このとき、受贈者は、贈与の事実とあわせて贈与額を明示することを求められます。
しかし、手渡しによる贈与では贈与額や贈与日を示す証拠が形として残りません。
贈与者が引き出した金額が、そのまま贈与額かどうかもわからないのです。
そうなると、調査が長引いたり、贈与の成立が危ぶまれたりすることもあるでしょう。

このように、手渡しによる現金贈与は、貸したのか贈与したのかも含めてかえって税務調査リスクを高める可能性があるというわけです。

税務調査のタイミングに注意

税務署の調査は、贈与直後に行われるわけではありません。
受贈者が大きな買い物をしたとき、あるいは贈与者が亡くなることで相続が発生したときなどに実施されるケースが一般的です。

つまり、「手渡しによる現金贈与は税務署にばれない」と思っている人の多くは、まだ調査を受けるタイミングが来ていないだけの可能性があります。
油断していると、本来の法定納期限を過ぎてから贈与を指摘されることになるでしょう。

贈与税を払わなかった場合のペナルティとは

適正な申告・納税は、国民の義務です。
正当な理由がないまま申告・納税を怠っていたことが発覚すると、本来納めるべき税金はもちろん、次のような附帯税を支払うことになる可能性があります。

延滞税

延滞税は、法定納期限までに納めるべき税金を完納しなかった場合に課される税金です。
いわゆる「延滞利息」のようなもので、法定納期限の翌日から完納するまでの日数分の延滞税を払う必要があります。

●延滞税の税率 ※2024年(令和6年)時点
①2.4%(納期限の翌日から2カ月を経過する日まで)
②8.7%(2カ月以降)

加算税

納税が遅れたという事実にかかる延滞税と違い、加算税は遅れた理由に対する行政制裁として科される税金です。
正当な理由があるケースでは免除や軽減を受けられる場合もありますが、意図的に逃れようとした場合にはペナルティは避けられません。
申告そのものを怠った場合や悪質な脱税が疑われるケースなど、状況に応じた数種類の加算税が用意されています。

贈与税に関連する主な加算税は、以下の通りです。

●「無申告加算税」の概要と税率 ※2024年(令和6年)時点
必要な申告そのものを怠った場合
①15%(50万円以下の部分)
②20%(50万円超300万円以下の部分)
③30%(300万円超の部分)

●「過少申告加算税」の概要と税率 ※2024年(令和6年)時点
期限内申告したものの、過少に不適正だった場合
①10%
②15%(期限内申告税額と50万円のどちらか多い金額を超える部分)

●「重加算税」の概要と税率 ※2024年(令和6年)時点
常習性が疑われる場合や偽装隠蔽などがあった場合
①35%(悪質な過少申告の場合)
②40%(悪質な無申告の場合)

現金を手渡しした場合でも、贈与税の申告が必要な理由

現金を手渡しした場合でも、贈与税の申告が必要な理由

現金を手渡ししたからといって、税金を納めなくて良い理由にはなりません。
手渡しで行った生前贈与も、贈与税の対象なのです。
ここからは、贈与税がかかる贈与とかからない贈与、贈与税の申告が必要となる金額について、詳しく説明します。

贈与税がかからない贈与

贈与税の対象となる財産は、現金・預貯金、土地や家屋などの不動産、自動車、書画骨董品、宝石貴金属など、経済的価値のあるものすべてです。
贈与の手段や方法については、問われません。

しかし、贈与の目的によっては、課税対象から外れるものもあります。
具体例は以下の通りです。

●生活費や教育費
夫婦や親子、兄弟姉妹などの間柄で扶養義務者から被扶養者に渡した財産のうち、生活費や教育費として必要だと認められるもの

●香典・祝儀など
香典や花輪代、ご祝儀、見舞金などのうち、社会通念上相当だと認められる金額

●特例や制度によって非課税で受け取れる部分
贈与税には、様々な特例や制度が用意されています。
それぞれの適用要件を満たし、非課税措置の適用を受けた部分については、贈与税はかかりません。
非課税措置という税額軽減効果の高い特例や制度では、厳密な条件やルールが定められています。

上記に該当しない贈与については、贈与税の課税対象です。
では、いくらから、どのくらいの贈与税がかかるのでしょうか。

贈与税の計算は1年で一区切り

通常の贈与は、1月1日から12月31日までの1年間を一区切りとして考えます。
贈与税は受け取った人(受贈者)が納める税金ですから、この1年間で受け取った贈与財産の合計額から贈与税を算出するわけです。

この課税方法を暦年課税といい、特別な課税制度や特例の申請をしない限り暦年課税で税額を計算します。

贈与税の基礎控除は年間110万円

基礎控除とは、誰もが利用できる税額軽減措置のひとつです。
1年間の贈与財産合計額のうち、基礎控除額の110万円までは贈与税がかかりません。

例えば、1年間で300万円の贈与財産を受け取った場合の課税価格は、以下のようになります。

300万円-基礎控除110万円=課税価格190万円

贈与税率は受贈者と贈与者の関係によって2パターンある

贈与税の課税方式は、課税財産が高いほど税率も高くなる累進課税方式です。
また、「一般税率」と「特例税率」という2種類の税率があり、贈与者と受贈者の関係性によって分けられています。
具体的な適用条件と税率は、以下の通りです。

●特例税率
贈与者が父母や祖父母で、受贈者が18歳以上の子や孫である贈与を「特例贈与」と呼び、年200万円を超える贈与から一般贈与よりも税率が軽減された特例税率が適用されます。
このとき、年齢基準日は贈与の実行日ではなく、贈与を受けた年の1月1日である点に注意が必要です。

基礎控除後の課税価格 税 率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

●一般税率
特例贈与に該当しない贈与は、一般贈与として下記の一覧に示す税率が適用されます。

基礎控除後の課税価格 税 率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円

贈与税の申告期間は翌年2月1日から3月15日

贈与税の法定申告期間は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日です。
基礎控除を上回る贈与を受けた場合は、忘れずに申告と納税を行いましょう。

生前贈与で現金を手渡しする際の正しい証拠の残し方などの注意点

生前贈与で現金を手渡しする際の正しい証拠の残し方などの注意点

適正な納税額を算出するためには、贈与額を明らかにする必要があります。
しかし、現金を手渡しする方法では、いくら贈与したのか又は貸したのかわかりません。
適正税額を算出するためには、明確な贈与金額が必要です。

税務職員による調査を受けた際に、余計な疑いを抱かれないためにも、しっかりと証拠を残すことをおすすめします。

贈与契約書の作成

贈与とは、贈与する側と受贈する側、双方の合意を必要とする契約行為です。
法律上は、口約束程度でも贈与自体は成立します。
しかし、税務調査リスクを回避するためや「貸付金」と誤解され相続税の対象とされない為にも、契約書を作って記録が残るようにしておくほうが安心です。

贈与契約書の書き方は、特に決まりはなく、贈与者・受贈者の署名欄以外は手書きでもパソコンを用いて作成してもかまいません。
次の必要事項については、しっかりと書いておくことがポイントです。

●契約書に必要な記載事項
・贈与契約締結日(いつ)
・贈与者の氏名、住所、印(誰が)
・受贈者の氏名、住所、印(誰に)
・財産の詳細、金額(何を)
・贈与の方法(どのように)
・双方が合意しているという一文

贈与契約書は贈与者と受贈者それぞれが自署・捺印したのち、受贈者が保管しておくといいでしょう。

すぐに口座入金することが大切

現金の贈与は、贈与者から受贈者名義の口座に振り込む方法が安全です。
どうしても手渡ししたい場合は、受贈者が贈与者に「受領書」を発行した上で受贈者がすぐに全額を自分名義の預貯金口座に入金しましょう。
もちろん、いずれの場合も契約書はきちんと作成し、金額や振込口座を明記しておくことが大切です。

現金手渡し以外の贈与の方法で相続税を節税する方法

現金手渡し以外の贈与の方法で相続税を節税する方法

現金を手渡ししたことによる節税効果は見込めませんが、贈与税には様々な非課税措置が用意されています。
中には数千万単位の高額贈与が非課税になる制度もあるため、上手く利用しましょう。
贈与税をかけずに生前の財産分与ができれば、相続財産高の軽減と節税の両方を効果的に行うことができます。

次に、非課税枠が大きく節税対策効果の高い制度をピックアップして見ていきましょう。

用途を定めて大きな非課税枠を確保する方法

用途が限られている分、高額な非課税枠が用意されている各種制度の紹介です。
税額軽減効果が大きいため、贈与税申告が必須である他、厳密なルールや適用要件、適用期限が設けられています。

教育資金の非課税:1500万円(2026年(令和8年)3月31日まで)

親や祖父母などの直系尊属から、30歳未満の子供や孫に対して「教育資金」を渡す場合に、最大1500万円まで非課税で受け取れるという制度です。
予め開設した専用の管理口座を通じた贈与のうち、教育資金に用いられたことが確かな金額のみが非課税措置の対象となり、他の用途で使った分には贈与税がかかります。

結婚・子育て資金の非課税:1000万円(2025年(令和7年)3月31日まで)

直系尊属から、18歳以上50歳未満の子や孫に向けて「結婚・子育て資金」を贈与した場合に、1000万円まで非課税が適用される非課税措置です。
教育資金の非課税と同様に、事前に専用の管理口座を開設する必要があり、用途以外に用いた資金は贈与税の課税対象となります。

住宅取得資金の非課税:1000万円(2026年(令和8年)12月31日まで)

直系尊属から、18歳以上の子や孫に「住宅取得資金」を贈与したときに利用できる非課税制度です。
非課税限度額は、省エネ住宅で1000万円、それ以外の住宅では500万円となっており、贈与を受けた翌年の年末までに実際に居住を開始する必要があります。

おしどり控除:2000万円

おしどり特例(配偶者控除)は、20年以上連れ添った夫婦の間でのみ利用できる制度です。
条件を満たす夫婦間で、住宅あるいは住宅取得資金を贈与した場合、「基礎控除110万円+配偶者控除2000万円」以内なら贈与税がかかりません。

暦年贈与の基礎控除を上手く利用する

使途や贈与者・受贈者の年齢や関係性を限定せずに贈与したい場合は、暦年贈与の基礎控除を活用する方法がおすすめです。

暦年贈与の基礎控除では、毎年110万円までの贈与を非課税で受け取れます。
つまり、年間110万円以下の贈与を繰り返すことで、贈与税をかけずに財産を移管することができるというわけです。
ただし、この方法には次のような3つの注意点があります。

暦年贈与の注意点①他の贈与者に注意

基礎控除の適用対象は、1年間に受け取った暦年贈与の合計額です。
贈与者の1人が110万円の現金を贈与したのと同じ1年間に、別の贈与者からの財産を受け取った場合は、財産の合計額が基礎控除額を超え、贈与税がかかります。
贈与をする場合は、他に受け取る予定の贈与がないかどうかを受贈者に確認すると良いでしょう。

暦年贈与の注意点②相続財産加算に注意

暦年贈与では、贈与者が死亡した時点で一定の期間の生前贈与を相続財産に加算するという措置が設けられています。
この相続財産加算については、2024年(令和6年)の税制改正により、対象となる範囲に変更がありました。

改正後の範囲や条件は下記の通りです。

●相続時に相続財産に加算される暦年贈与財産
受贈者:贈与者の相続で遺産を受け取った相続人
財産の範囲:被相続人(贈与者)から受け取った下記の贈与財産
①相続開始前3年間の生前贈与
②相続開始前4年~最長7年間の生前贈与合計-100万円
※既納贈与税がある場合は、その金額を相続税と相殺

生前贈与は早ければ早い方が節税対策になる!専門家に正しい方法を相談

生前贈与は早ければ早い方が節税対策になる!専門家に正しい方法を相談

生前贈与には、相続ほどややこしい手続きもなく、贈与者の好きなタイミングで、希望通りの相手に贈与できるというメリットがあります。
しかし、本記事でも紹介したように、「貸付金」や「名義預金」と誤解されない様に確実に贈与することが大切です。また、非課税措置には期限があるものが多いため、生前贈与を考えている場合は、計画的に早めに動き始めたほうが良いでしょう。

また、節税対策として生前贈与を行う場合は、相続税をシミュレーションしてみることも重要です。
贈与税の非課税措置を使うことで、相続の際に相続税の減税措置が適用されなくなるというケースもあります。
贈与税の非課税措置と相続税の非課税措置、どちらの制度を利用すべきか判断に迷う場合は、税の専門家である税理士のサポートを受けると安心です。
税理士は税に関する知識が豊富であり、税の仕組みにも精通しています。
そのため、余計なトラブルを避けるようにしたいなら、税理士に相談するのがベストです。
特に、相続税・贈与税に強い税理士ならば、相続を見据えた生前贈与の方法について、法律に則り、適切なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。

まずは税理士法人のサイトやsnsで情報収集をして、ご自分の悩みに合った税理士を探すのがおすすめです。
最近では、参考となる事例や過去の実績などがカテゴリ別にまとめてあったり、キーワード検索ができたりと、情報を集めやすい工夫がされています。
料金や手順などもWeb上でわかる上、自分に類似した内容をコラムで見ることもできるので、一度、のぞいてみると良いでしょう。

相談してみたい税理士が見つかったら、電話やメールなどで質問したり連絡をとったりしてみてはいかがでしょうか。

相続税申告・相続手続きの
サポート7つ

亡くなった方から相続や遺贈によって財産を取得した場合にかかる「相続税」。
その申告と納税は10ヶ月という限られた期間内で終える必要があります。
相続ステーションⓇでは、相続税申告累計3,000件超を超える実績と豊富な経験・ノウハウがございます。
相続専門の税理士がお客様に合ったサポートを提案しています。

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相続税や争族は、生前対策次第で、かなり軽減できます。
相続ステーションⓇでは、様々なメニューの中から、財産内容やご相続人の状況に合った最適なサポートを提案しています。

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