生前贈与でかかるのはいくらから? 税金の計算方法や税率計算をわかりやすく解説
生前贈与とは、財産の持ち主が生きている間に財産の譲渡を行うことです。
生前贈与は将来の相続財産を減らすことができるため、相続対策としても注目されています。
また、贈与の非課税枠を利用すれば、贈与税も節約できるでしょう。
本記事では、非課税枠の紹介と贈与税の計算方法についてくわしく解説します。
生前贈与とは 課税と非課税枠の一覧をご紹介

生前贈与とは、財産を所有する個人が、財産を無償で譲渡することをいいます。
このとき、贈与によって生じた利益にかかる税金は、贈与税です。
贈与税の非課税枠一覧
生前贈与には、いくつもの非課税制度があります。
誰もが適用を受けられる基礎控除のほか、適用要件を満たすと利用できる非課税制度までさまざまです。
これらの非課税枠をうまく使うことで、贈与税や相続税の負担を軽減することができるでしょう。
●暦年贈与の基礎控除
【非課税枠】
・基礎控除:年間110万円
【適用条件など】
・特になし
●相続時精算課税制度の基礎控除と特別控除
【非課税枠】
・基礎控除:110万円(毎年)
・特別控除:累計2500万円
【適用条件など】
・60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫への贈与
●夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(おしどり控除)
【非課税枠】
・基礎控除:110万円
・配偶者控除:最大2000万円
【適用条件など】
・婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産取得費用を贈与した場合
●直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
【非課税枠】
・省エネ住宅:1000万円まで
・それ以外の住宅:500万円まで
【適用条件など】
・父母や祖父母から子どもや孫に対する住宅取得資金の贈与
・適用期限:2026年(令和8年)12月31日まで
●直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
【非課税枠】
・結婚子育て資金として最大1000万円
【適用条件など】
・父母や祖父母から18歳以上50歳未満の子どもや孫に対する結婚・子育て資金の贈与
・金融機関との信託契約が必要
・適用期限:2027年(令和9年)3月31日まで
●直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
【非課税枠】
・教育資金として最大1500万円
【適用条件など】
・父母や祖父母から30歳未満の子どもや孫に対する教育資金の贈与
・金融機関における信託契約が必要
・適用期限:2026年(令和8年)3月31日
贈与税で課される税率・税額の早見表

贈与税は、財産を受け取った人(受贈者)が納める税金です。
複数の贈与者から別々に贈与を受けた場合でも、受贈者が受け取った贈与の合計額に対して税金がかかる点に注意しましょう。
生前贈与(暦年課税)
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産を基準に計算します。
この方法を暦年課税といい、後述する特別な課税方式や特例を選択しない場合は、すべて暦年贈与の対象です。
贈与税の「基礎控除」は年間110万円
贈与税には、基礎控除110万円が適用されます。
1年分の贈与合計額から、基礎控除を差し引きいて残った金額が課税対象金額です。
つまり、1年間の贈与額が110万円を下回る場合には、贈与税はかかりません。
暦年贈与の「特例税率」と「一般税率」
贈与税率は、課税対象金額に応じて段階的に税率が上がる「累進課税制度」です。
また、贈与者と受贈者の関係や年齢で異なる2種類の税率がある点にも注意しましょう。
●贈与税【特例贈与財産用】特例税率速算表
特例税率の適用条件は以下の通りです。
・受贈者:贈与のあった年の1月1日時点で18歳以上
・贈与者:受贈者の父母や祖父母などの直系尊属
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ‐ |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
●贈与税【一般贈与財産用】一般税率速算表
一般税率は、特例税率が適用されない贈与に対して適用されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ‐ |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
暦年贈与の税額を計算する方法
贈与税額の計算式は、次の通りです。
贈与税額=(贈与総額-基礎控除)×贈与税率
「特例贈与」と「一般贈与」の両方受け取った場合の税額計算方法
その年に受け取った贈与が、すべて一般贈与だという場合は「一般税率」を用いて計算します。
すべて特例贈与だったという場合も、同様に「特例税率」のみを用いるため簡単です。
しかし、父母や祖父母以外の方からの一般贈与と、父母や祖父母からの特例贈与が混在しているケースでは、下記の手順で算出します。
①贈与総額=特例財産合計額+一般贈与合計額
②特例財産の贈与税額=(贈与総額-基礎控除)×(特例財産合計額÷贈与総額)×特例税率
③一般財産の贈与税額=(贈与総額-基礎控除)×(一般財産合計額÷贈与総額)×一般税率
④贈与税額=特例財産の贈与税額+一般財産の贈与税額
生前贈与で課される贈与税と相続税の計算方法と税率計算を解説

生前贈与に課される税金は、贈与税です。
一方、相続税とは、所有者の死亡をきっかけに起こる贈与(遺贈)や相続によって財産の移動があった場合にかかります。
このように、譲渡された財産は、所有者の生死によって課税される税金が異なるのが一般的です。
しかし、一定の条件を満たす場合、生前贈与された財産が贈与税と相続税の課税対象とされるケースがあります。
暦年贈与の相続財産加算
暦年贈与で受け取った財産のうち、相続財産に加算する条件は、下記の通りです。
●加算対象条件1:贈与者と受贈者の関係
・贈与者:この相続における被相続人(亡くなった人)
・受贈者:この相続における相続人で、相続や遺贈によって財産を受け取った人
●加算対象条件2:生前贈与の期間
相続財産の加算対象期間については、2023年(令和5年)の法改正により、次のように変更されました。
【変更前】被相続人の死亡からさかのぼって3年以内
【変更後】被相続人の死亡からさかのぼって7年以内
ただし、この変更は2024年(令和6年)1月以降の贈与に適用されるため、加算対象期間の拡大は下表の通り段階的に行われます。
相続の発生時期 | 相続財産の加算対象期間 |
2025年(令和7年) | 相続開始前3年間 |
2026年(令和8年) | 相続開始前3年間 |
2027年(令和9年) | 2024年(令和6年)1月1日~相続開始日の4年間 |
2028年(令和10年) | 2024年(令和6年)1月1日~相続開始日の5年間 |
2029年(令和11年) | 2024年(令和6年)1月1日~相続開始日の6年間 |
2030年(令和12年) | 2024年(令和6年)1月1日~相続開始日の7年間 |
2031年(令和13年)以降 | 相続開始前7年間 |
●対象期間の加算額
変更前から対象とされていた3年間と延長した4年間では、加算額が異なる点に注意が必要です。
・死亡からさかのぼって3年以内の財産:すべて
・延長された4年間の財産:4年分の贈与財産合計額-100万円
贈与が行われたときに贈与税を納めている場合は、その税額が控除されます。
相続財産に加算された場合の相続税計算方法
相続税の計算方法は複雑で、相続人が受け取った財産額に相続税率を乗じるだけでは算出できません。
まずは、被相続人が遺した財産をすべて合計してから課税対象額を算出します。
①遺産額=遺産総額-(非課税財産+葬式費用+債務)+加算対象の暦年贈与財産、及、相続時精算課税贈与財産
②課税遺産総額=遺産額-[基礎控除額:3000万円+(600万円×法定相続人数)]
次に行う計算は、法定相続分による相続税額の計算です。
法定相続分とは、法律によって定められた相続割合のことで、必ずしも実際の相続額と合致するとは限りません。
③法定相続分による相続人ごとの相続税額=課税遺産総額×相続人ごとの法定相続分×相続税率 ※相続人数分行う
④法定相続分による相続税総額=相続人ごとの相続税額を合算
最後に、実際に取得した財産に応じた割合で、全体の相続税額をあん分します。
⑤実際の相続税額=法定相続分によろう相続税総額×実際の取得割合 ※財産を取得した人ごとに行う
●相続税率(相続税速算表)取得金額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
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●贈与税の計算方法を解説
贈与税を抑える場合や値上り期待の財産、収益期待の財産の贈与は「相続時精算課税制度」を活用しよう

相続時精算課税制度とは、生前贈与で利用できる税額軽減制度の1つです。
その名の通り、相続時に相続財産として清算することを条件に、一定の財産を贈与税非課税で受け取れます。
相続時精算課税制度の利用手順
相続時精算課税制度を選択する場合には、次の手続きが必要です。
①適用対象者から贈与を受けた初年度の贈与税申告期間内に「相続時精算課税選択届出書」を所轄の税務署に提出
②届出が受理されると、その贈与者は「特定贈与者」となり、相続時精算課税が適用される
いったん特定贈与者となった人からの贈与は、すべて相続時精算課税が適用されます。
途中で暦年贈与に戻すことはできないため、慎重に検討しましょう。
●適用対象者
・贈与者:贈与を行う年の1月1日時点で60歳以上、受贈者の直系尊属である父母または祖父母
・受贈者:贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上、贈与者の直系卑属である推定相続人(通常は子ども)、あるいは孫
※推定相続人とは、現状のままで相続が開始した場合に法定相続人となる人のことです。
●相続時精算課税の控除制度
相続時精算課税によって受け取った財産には、下記の控除が適用されます。
・基礎控除:110万円(毎年)
・特別控除:累計2500万円
控除の適用は、先に基礎控除を差し引き、残った額から特別控除を差し引くという順序です。
基礎控除と特別控除を超過した部分は、一律20%の贈与税がかかります。
相続財産に加算される金額
特定贈与者が亡くなった際に、相続財産として精算する財産は以下の部分で、しかも、贈与時点の評価額を加算するだけで良いので、贈与日以降に値上りを期待できる財産や、収益が期待できる財産を贈与するには有利と言えます。
・特別控除が適用された財産:すべて(累計2500万円)
・超過財産:基礎控除と特別控除を上回った部分のすべて
超過財産を相続財産に加算する場合、一律20%で納めた贈与税は相続税と相殺され、残った額は還付されます。
また、生前贈与時に基礎控除が適用された部分については、相続財産の加算対象とはなりません。
≪関連ページ≫
●生前贈与の非課税枠は2500万円と年110万円
生前贈与と共に活用できる 子や孫に財産相続させる方法

生前贈与と併用することで、子や孫への財産承継をより効果的に行う方法について解説します。
遺言書の活用
遺言書は、遺産の分け方を指定できる最も一般的な方法です。
遺言書のない相続では、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が何をどのくらい承継するか話し合います。
一方、遺言書がある場合は、基本的に遺言書通りに進めるため、特定の相続人に相続させたい財産がある場合に効果的です。
遺言書を作成する際には厳密なルールに則る必要があります。
遺言書活用のメリット
遺言書のメリットとして、法定相続人以外にも財産を継がせることができるという点が挙げられます。
通常、被相続人の子どもは法定相続人となりますが、養子縁組していない孫に財産を承継させたいと考える場合は、遺言書の作成が必須です。
また、財産の内容や相続人の関係性によっては、遺産トラブルが発生するリスクが高いことが予想できます。
あらかじめ行き先を決めておくことで、トラブル回避にも役立つでしょう。
遺言書活用のデメリット
遺言書には厳密なルールがあり、形式や内容に不備があると法定効力が発揮できません。
確実性の高い遺言書を作成するためには、手間や費用がかかります。
●遺留分への留意
遺留分とは相続人が最低限取得できると保証されている遺産取得割合です。
遺留分は遺言書よりも優先され、遺言の内容によって遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額を金銭で支払うよう求めることができます。
特定の人への承継額を大きくしすぎると、遺留分請求のトラブルが起こるかもしれません。
生前贈与で節税対策するため、専門家に正しい方法をご相談ください

生前贈与は、一般的に相続対策として有効な手段です。
しかしながら、非課税枠や特例などの税額軽減制度を効果的に利用するためには、税や相続に関する専門の知識が求められます。
中には、贈与税の非課税制度を利用したことで、相続税の非課税制度が使えなくなるケースもあるため、慎重に検討することが大切です。
生前贈与を活用して節税対策を行いたい場合は、贈与税と相続税にくわしい税理士に相談すると良いでしょう。
税務の専門家である税理士ならば、生前贈与から将来の相続まで見据えたアドバイスを提供できます。
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