事業承継のリスクヘッジ◆自社株・個人名義土地建物・遺言書・贈与
自社株と同様に個人名義のまま事業利用している財産を分散させずに確実に現経営者や後継者に取得していただく方法として遺言や贈与があります。ただし建物・機械設備・車両など、評価が下がっていく財産の贈与は当事務所ではお勧めしていません。それらは法人が買取った方が良いでしょう。
一般中小法人について承継者が行うべきリスク対策は『自社株の贈与税・相続税の納税猶予』の余地をつくっておく為に「事業承継計画書」を都道府県宛てに2024年(令和6年)3月末までに提出しておくことですが、併せて検討すべきは次の点です。
自社株について遺産分割で紛糾しないように遺言書で承継者を定めておく、又は、生前贈与しておく
法人事業用に使っている土地や建物について、
① 遺言書で承継者を定めておく
② 生前贈与、又は、法人が買い取っておく。
③ 買い取らない場合は、同族会社の事業用小規模宅地の減額特例が使えるように「賃貸契約書」を作成し、地代や家賃を払う。
などの方法があります。
「遺言」や「小規模宅地の減額」については、各ページをご覧いただくとして、この項目では上記の点について解説します。
≪関連ページ≫
●遺言書が必要な16のケース●相続手続きと相続税申告をスムーズにする為
●小規模宅地の減額特例の活用◆同族会社事業用宅地
自社株の贈与
株式会社や有限会社の事業承継にとって、後継者の持株割合は非常に大切です。遺言で相続させることもできるますが、将来的に株価が上がりそうであれば検討する必要があるでしょう。
贈与する場合の手順は以下のとおりとなります。
- (1) 自社株の評価
- (2) 贈与者と受贈者の決定
- (3) 贈与株数の決定
- (4) 贈与の実施と証拠書類の作成
- (5) 贈与税の申告と納税(必要な場合のみ)
出資の評価方法
自社株を中心的な株主に贈与するときの評価は法人の規模により、類似業種比準方式、類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式及び純資産価額方式により評価することとされています。
自社株の贈与・・・贈与事実の証明
贈与にあたっては、贈与したという「事実」を証明しておかなければなりません。具体的には取締役会の議事録と贈与契約書を作成し、贈与の事実があったことの証拠書類を作成する必要があります。
当然のことながら贈与額によっては贈与税の申告及び納税が必要です。
贈与の方法
「暦年贈与」(年110万円までの贈与は非課税)と「相続時精算課税贈与」という2つの方法がありますが、業績(=今後の株価の見通し)により選択します。
法人が使っている土地・建物の贈与
出資の評価で解説したのと同様に
「暦年贈与」と「相続時精算課税贈与」がありますが、
贈与額が大きくなると思いますので、
通常は、「相続時精算課税贈与」を使います。
「自社株の贈与税の納税猶予」特例を使うときも併用できます。
尚、土地を贈与する際には、
できるだけ評価技術を駆使して「路線価から減額」しなければいけないことは言うまでもありません。
≪関連ページ≫
●贈与税割合表(贈与税額表)
●相続時精算課税制度の贈与を活用した相続税節税の実施(賃貸建物・値上り土地・自社株など)改正で年110万円以下贈与も有効
●土地評価の減額は相続税の節税と遺産分割で最重要
名義株の整理
中小企業といえども会社後継者にとって全株式の2/3超や3/4超の議決権を有しておくことは大切です。昔は会社設立の際に7人の発起人(=出資者)が必要だったことから、名義だけ借りて実際の出資は1人だけが負担していた時代が長く続きました。いわゆる「名義株主」と言われる形式上のみの株主です。
設立以降一度も増資や配当もしていない場合は1日も早く実際の出資者と名義株主との間で『実質株主 確認書』を交わして実際の出資者を整理しておきましょう。名義株主が死亡している場合には、その遺族との間で締結しておきます。
他方、相続税を減らすことだけを考えて、支配権のことを考えず全株の25%超を後継者以外の子や孫に贈与している体裁で分散しているケース。しかし、法人税の申告書の記載だけで、贈与の契約書や贈与の為の議事録も作成せず、1人あたり年110万円以下であることから贈与申告していない。このケースは税務署も「贈与の実態」が無いとして、相続税の申告後に税務調査で否認してきがちです。
このケースの場合は不幸中の幸いとして、上記同様に『実質株主 確認書』を名義株主と元来の株主との間で交わした上、後継者と贈与契約や遺言書を作成しましょう。
≪関連ページ≫
★自社株を分散させない遺産分割方法の提案(株式分散のリスク)
★同族会社の株式(取引相場のない株式)を評価
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