土地を相続した時の相続税は?仕組みや計算方法を解説します
もしもあなたが親や配偶者の遺産を相続することになった場合、そこに土地は含まれますか?
一般に、土地は高い価値を有することが多い財産です。
そのため、相続財産に土地が含まれている場合は、相続税も多くかかることになるでしょう。
しかし、特例や控除制度を使って土地の評価額を下げることができれば、その分税額負担を抑えることが可能です。
この記事では、土地を相続した時の評価額計算方法や、節税を目的とした土地の活用方法、申告手続きについて詳しく解説します。
土地を相続した時、相続税はいくらかかるのか?
相続税がいくらかかるのかについては、遺産の額や相続人の数によって異なるため一概にはいえません。
確かなことは、相続税の対象となる課税金額が大きければその分税額も増えるため、相続する財産の価値が高いほど大きな税負担になるということです。
しかし相続税の計算では課税金額を減らすための控除制度がいくつも用意されており、土地に特化した特例もあります。
まずは、ベースとなる相続税の計算方法についてお話しましょう。
相続税の計算方法と、対象となる人物について
相続税は、亡くなった人(被相続人)の遺産を受け取った人(相続人)が納めるべき税金です。
被相続人が亡くなったことを相続人が知った日を相続の開始日とし、それから10ヵ月の間に相続税の申告と納税を済ませなければなりません。
相続の開始後は、相続税を計算するために必要な情報を集めることが重要です。
相続人の確認
相続人は、民法によってその範囲が定められています。
法によって定められていることから「法定相続人」と呼ぶこともありますが、ここでは「相続人」という呼び方に統一して進めることとしましょう。
●配偶者
被相続人の配偶者は、常に相続人です。
●その他の血族
配偶者以外の血族は、被相続人との関係により次の順序に従って相続人となります。
第1順位:①子②孫③ひ孫(直系卑属)
第2順位:①父母②祖父母③曾祖父母(直系尊属)
第3順位:①兄弟姉妹②甥姪
例えば、相続開始時に子が亡くなっている場合は、その子の直系卑属である孫が相続人となります。
さらに孫も亡くなっている場合は、その直系卑属であるひ孫が相続人です。
順位の中の①②③に該当する人が誰もいない場合は、ひとつ下の順位へと相続する権利が移ります。
遺言書の有無の確認
被相続人が遺言書を作成していない場合、相続人全員の協議によって遺産をどのように分けるのかを決定します。
しかし、遺言書がある場合は、遺言書のとおりに遺産を分けるのが基本であり、そのため相続人の期待や予想と異なることもあるでしょう。
相続が発生したら、なるべく早めに遺言書の有無を確認しておくことが大切です。
遺産と債務の確認
被相続人が所有する遺産や債務を調べ、目録や一覧表を作成しておきましょう。
●プラスの遺産
被相続人が所有していた現金や預貯金、有価証券、土地や建物、書や画、骨董、各種のブランド品など、経済的な価値があるものはすべて相続財産です。
被相続人にかけられた保険の死亡保険金は、みなし相続財産として遺産に計上しましょう。
この時、死亡保険金額のうち「500万円×法定相続人」には非課税枠が適用されるため、受取金額から控除されます。
また、3年以内に被相続人から生前に贈与された財産や、相続時精算課税制度を適用させた贈与財産も、遺産として計上します。
ただし、すでに別の税目で納付した税金は除外されるため、既納贈与税(相続に先だって納めた贈与税)がある場合は忘れずに差し引いておきましょう。
他方、相続発生前に被相続人の預金口座から出金した現金がある場合も遺産として相続税申告と遺産分割の対象となることに注意が必要です。
●マイナスの遺産
被相続人が抱える借金や未払金などの「債務を支払う義務」も相続することになり、相続税申告上も控除できます。
また、被相続人の葬式の費用は遺産額から控除できるため、領収書を保管しておきましょう。
相続税額の計算
相続税は、遺産のすべてにかかるわけではありません。
まずは、「プラスの遺産」から「マイナスの遺産」を差し引き、正味の遺産総額を算出しましょう。
その後、相続税の基礎控除額「3000万円+(600万円×法定相続人数)」を計算します。
正味遺産総額のうち、基礎控除額を超える部分のみが相続税の課税対象です。
この時、課税対象金額が0円になった場合は相続税がかからないので、相続税の申告も納税も必要ありません。
土地の「相続税評価額」とは?詳しく解説!
遺産の価値は相続開始時点の時価で評価するため、実際の購入価格とは違います。
土地は、価格が変動する財産のひとつです。
原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに分け、それぞれに定められた方法で評価を行うことになります。
今回は、宅地の評価方法について具体的にご紹介しましょう。
宅地の評価①路線価方式
宅地とは、建物の敷地として使われる土地のことです。
路線価が定められている地域では、次の式で評価額を求めます。
・宅地評価額=路線価×補正率×面積
●路線価
路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地1㎡あたりの価格のことで、国税庁のホームページでいつでも閲覧できるため、一度確認しておくと良いでしょう。
●補正率
補正率とは、間口が狭い土地や奥行が長い土地、がけ地や不整形地、造成費などは土地の形状に応じて予め設定された数値のことです。
使い勝手が悪く複雑な土地は、その土地に適した補正率を乗じることで評価額の減額が期待できるので、不動産相続に詳しい専門税理士に依頼されることをオススメします。
宅地の評価②倍率方式
路線価が定められていない地域では、次の計算式を用いて評価額を算出します。
・宅地評価額=宅地の固定資産税評価額×評価倍率
●固定資産税評価額
固定資産税は地方税のひとつで、宅地のある自治体の役所で確認できます。
しかし、自治体が算出している固定資産評価額も間違っていることがあるので、減額できる余地があるか否かは不動産相続に詳しい税理士に相談された方が良いでしょう。
●評価倍率
評価倍率は、国税庁ホームページに掲載されており、いつでも閲覧可能です。
貸家建付地の評価
貸家建付地とは、建築した家屋ごと貸し付けている土地のことです。
貸家建付地の評価額は、次の算式で求めます。
・貸家建付地評価額=自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
●自用地評価額
自用地とは、自宅が建っている部分や建物が建っていない部分(貸していない部分)のことです。
自用地の評価は、通常の宅地と同じ「路線価×補正率×敷地面積」で求めます。
●借地権割合、借家権割合
国税庁のホームページ内に記載されており、地域によって異なります。
●賃貸割合
アパート等の入居率を示す数値で、「賃貸されている床面積÷全体の床面積」で計算します。
他の条件が同じ場合、賃貸割合が高いほど貸家建付地の評価額も高くなるのが一般的です。
貸宅地の評価
貸宅地とは、建物の敷地として貸し付けている宅地のことで、建物部分の権利は別の人が所有する場合をいいます。
評価額を求める式は、次のとおりです。
・貸宅地評価額=自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合)
●借地権割合
他の数値と同様に、各地域によって異なりますが、国税庁のホームページ内でいつでも閲覧できます。
貸家建付地や貸宅地は、土地の所有者が自由にできる範囲が制限されている分、評価額も下方修正されるというわけです。
≪関連ページ≫
●路線価評価で節税できる!「24種の土地」該当チェックリスト
土地を相続した時にすべきこと・注意点
土地の所有者(登記名義人)が亡くなり、土地や建物などの不動産を相続した場合は、不動産登記の変更をするため相続登記を行いましょう。
不動産登記とは、権利関係などの状況把握のために、土地や建物の所在や面積、所有者を記載するもので、相続登記がされない土地は「所有者不明」ということになってしまいます。
所有者不明の土地があると、公共事業や民間取引を阻害する要因となったり、放置により近隣に悪影響を与えたりする可能性があるため、問題視されているというわけです。
相続登記の申請が義務化
2024年(令和6年)4月1日施行の法改正で、これまで任意だった相続登記の申請が義務化されることが決まりました。
改正後、不動産を相続した人は、「遺産分割が成立した日」あるいは「その不動産を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を必ず行う必要があり、怠ると10万円以下の過料の適用対象となるので注意しましょう。
それ以前に相続発生している方も基本的には同様です。
≪関連ページ≫
●土地評価を下げる為の徹底調査
土地を利用して相続税を節税できる!詳しい控除と特例について説明
遺産に土地が含まれている場合、「誰が相続するのか」という点が重要なポイントとなります。
相続のしかたによっては、土地の評価額が大きく減額され、相続税の負担を軽減することが可能です。
ここからは、土地に関連する特例制度について解説します。
小規模宅地等の特例
被相続人の自宅が建っている宅地や被相続人の事業に使われていた宅地は、条件を満たす相続人が取得することで、その評価額を大きく減額させることができます。
宅地の利用区分と減額割合を一覧にまとめると、次のとおりです。
宅地等の利用区分 | 減額割合 | 限度面積 |
特定居住用宅地等 | 80% | 330㎡ |
特定事業用宅地等 | 80% | 400㎡ |
貸付事業用宅地等 | 50% | 200㎡ |
この場合の減額は、あくまでも相続税計算上のことで、実際の売買価格には影響がありません。
また、小規模宅地等の特例では、減額が適用される最大の面積が定められており、限度面積を超えた部分については元の評価額で計算するという点に注意しましょう。
土地の利用区分ごとに、対象となる土地の条件と相続人の適用要件は次のとおりです。
特定居住用宅地等
特定居住用宅地の適用要件等は次のとおりです。
土地の条件 | 相続人の条件 | 適用要件 |
・被相続人の自宅等 ・被相続人と生計を一にする親族の自宅等 |
・被相続人の配偶者 ・被相続人の同居親族 |
(配偶者は要件なし) ・相続開始前から、相続税申告期限まで居住していること |
被相続人の配偶者や同居家族以外が相続した場合でも、次の条件をすべて満たす場合は特例が適用されます。
①被相続人に配偶者、同居家族がいない
②相続開始前3年以内に、相続人自身や配偶者などが所有する家屋に住んだことがない
③相続開始時点で、居住する家屋を所有していない
④相続開始時から、相続税申告期限まで該当宅に居住すること
つまり、すでに被相続人の配偶者などが亡くなっていて、独立して賃貸住宅や社宅などに暮らしていた子どもが戻ってきた場合などが、適用要件を満たします。
特定事業用宅地等
特定事業用宅地の適用要件等は、以下のとおりです。
土地の条件 | 相続人の条件 | 適用要件 |
・被相続人が事業に使っていた宅地 ・被相続人と生計を一にする親族が事業に使っていた宅地 ・被相続人の同族会社が事業で使っていた宅地 |
・その事業を継承する親族 ・同族会社の役員 |
・その事業を継承し、相続税申告期限まで営んでいること ・その宅地等を相続税申告期限まで保有していること |
被相続人が営んでいた事業を継承した相続人が、その事業用の土地を相続することで、適用要件を満たします。
ただし、相続開始より遡って3年以内に事業を始めた宅地は、一定規模以上の事業を行っている場合を除き適用対象外となります。
つまり、相続対策として急に事業を始めても、年数によっては税制優遇が受けられないということです。
貸付事業用宅地等
被相続人が営む事業が「不動産の貸付、その他類する貸付業」に限定されていますが、土地の条件や相続人の条件、適用要件は貸付事業用宅地とほぼ同じとなります。
相続開始前3年以内に始めた貸付事業用宅地が除外されるという点も同様です。
ただし、限度面積や減額割合などは特定事業用宅地と異なるので注意しましょう。
土地の条件 | 相続人の条件 | 適用要件 |
・被相続人が貸付事業に使っていた宅地 ・被相続人と生計を一にする親族が貸付事業に使っていた宅地 |
・その事業を継承する親族 | ・その貸付事業を継承し、相続税申告期限まで営んでいること ・その宅地等を相続税申告期限まで保有していること |
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相続した不動産を上手に活用していきましょう
土地を相続した場合、「自分で使う」「貸す」「売却する」といった選択肢が考えられます。
しかし、小規模宅地等の特例を受けるためには、少なくとも相続税申告期限までは相続した宅地を保有し続けなくてはなりません。
つまり、安易に早々に売却して現金化することが必ずしも得策とはいえないのです。
さらに、相続する土地が広い道路に面したきれいな形の土地だとは限りません。
相続する土地の評価額を決める際には、形状や立地をしっかりと見極め、補正率が使えるかどうかを確認することも大切です。
できる限り適正な評価額に補正したうえで、小規模宅地等の特例適用を受けられるような遺産分割を検討すると良いでしょう。
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土地を相続する前にまず、土地に詳しい税理士に相談
土地を相続した場合は、土地に強い専門家に相談することが大切です。
節税のために土地の評価額を下げたいのならば、土地評価専門図面や不動産法令を理解している税理士に依頼しなければ難しいでしょう。
1㎡あたり1万円の減額でも、その土地が300㎡ならば合計で300万円の減額ができるということになります。
もちろん、税法上の特例や控除の活用も大切ですが、評価額の減額は根本的な節税につながるのです。
土地を相続する場合は、土地や建築物の知識を持っている税理士に、土地の評価部分だけでも相談してみてはいかがでしょうか。
まずは税理士が開設しているサイトを参考にしたり、無料相談サービスなどを利用したりしながら、自分のケースに対応してくれる税理士を探してみるのもおすすめです。
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