相続手続きの手順や流れは?期限別でわかりやすく解説!
身近な親族などが亡くなった場合、葬儀の後、遺産相続・保険請求・相続税申告、各種遺産の名義変更など、様々な手続きを行わなければなりません。
その上、いくつかの手続きには期限があるため、手続きを忘れたり後回しにしたりすると後々トラブルが発生するおそれもあります。
とはいえ、相続の手続きはそうそう経験することではなく、不慣れだという人がほとんどでしょう。
何から始めてどのように進めるべきか、この記事では、相続手続きの手順や流れを時系列でわかり易く解説していきます。
詳しい手順や流れを解説!自分で申告or税理士に任せる
相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人が取得するための手続きで、次のような流れで行います。
①遺言書の確認
②相続人の確定
③相続する財産の調査、評価
④遺産分割協議
⑤相続税の計算、申告、納税
手順だけを見ると簡単そうに思えますが、相続以外の諸手続と並行して行う点、取得する書類と作成する書類の量が多いという点、一般的に不慣れな作業で相続税の知識がないとわかりにくいという点などから、専門税理士に手続きの代行やサポートを依頼する人も少なくありません。
税理士に依頼するメリットは、まず「手間と時間がかからずに済む」「ミスや不備・モレのない書類を整えてもらうことができる」という実務的な負担軽減でしょう。
さらに、「それぞれのケースに応じた相続節税が行える」という点も大変に魅力的なメリットです。
しかし、「依頼にはお金がかかる」という点をデメリットと捉える人もいるでしょう。
そこで、この記事では、遺産相続手続きと同時進行で行わなければならない諸手続について、被相続人が亡くなってからの期間ごとにご案内します。
「この程度なら、自分でもできる」「いや、税理士に依頼しよう」という判断をする際の参考になれば幸いです。
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遺産相続手続きの流れ〜3ヶ月以内
亡くなって最初の3ヵ月は、法事や届け出が集中しているため非常に忙しくなります。
そのため、予めどのような手続きがあるのかを知ることで、効率良く進めることができるでしょう。
亡くなってから7日以内
まずは、被相続人が亡くなったことについての諸手続きを行います。
●死亡診断書の取得
医師が証明した死亡診断書、状況によっては死体検案書を受け取ります。
●死亡届の提出
「死亡診断書(死体検案書)」と届出人の印鑑を持って市区町村役場に行き、死亡届を提出します。
提出先は、「亡くなった人の本籍地か死亡地」あるいは「届出人の住所地」の役所で、亡くなった人の住所地ではないことに注意しましょう。
●埋火葬許可申請
葬儀に必要な「埋火葬許可証」を得るための手続きで、死亡届の提出と同時に行うことが一般的です。
●健康保険・厚生年金保険の資格喪失届
会社勤めをしている人が亡くなった場合は、亡くなる前に加入していた健康保険と厚生年金保険の資格喪失手続きをしなければなりません。
勤務先が窓口になるため、5日以内に連絡を入れましょう。
被相続人の健康保険に加入している扶養家族がいる場合は、個別に国民健康保険への新規加入手続きが必要です。
亡くなった日から10日以内
葬儀を行う場合は、それぞれの意向や都合に応じて様々な手配が必要になります。
相続では葬儀費用を遺産額から差し引くことができるため、葬儀関連の領収証は大切に保管しておきましょう。
●年金受給停止の手続き
年金受給者が亡くなった場合は、「受給権者死亡届」を提出して年金を停止してもらわなくてはなりません。
亡くなった日以降に振り込まれた年金については、後日返還を求められることになるため注意しましょう。
未支給分がある場合や遺族年金の受給対象者に該当する場合は、それぞれの請求手続きを行います。
亡くなった日から14日以内
公的保険や公共サービスの多くは、亡くなってから14~15日後を届出期限としています。
下記の手続きは、市区町村役場の窓口で死亡届を提出する際にまとめて行うケースが一般的ですが、見落としていた場合などは速やかに済ませましょう。
●住民票の抹消届、住民票の除票の発行申請
亡くなった人を住民票から外し、その旨を証明する「住民票の除票」を発行してもらいます。
●世帯主変更届
世帯主が亡くなった場合は、世帯主を変更する旨を届け出ます。
●国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失届
国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった場合は、資格喪失の手続きを行い、保険証を返却します。
世帯主変更を伴う場合は、家族分の国民健康保険証も書き替えが必要です。
●介護保険の資格喪失届
要支援・要介護認定を受けていた人が亡くなった場合は、資格喪失の手続きを行い、介護保険被保険者証を返却します。
●児童手当受給者の変更
児童手当受給者が亡くなった場合は、代わりに養育する保護者が改めて児童手当の新規申請を行います。
マイナンバーは住民票と紐付いているため個別の手続きは不要で、カードを返却する必要もありません。
相続手続きでは、被相続人のマイナンバーカードが必要になる場面がいくつもあるため、大切に保管しておきましょう。
亡くなった日から、なるべく早い時期に
特に期限は設けられていないものの、なるべく早く済ませたほうが良い手続きも紹介しておきましょう。
●金融機関への連絡
銀行や証券会社など、被相続人名義の口座がある金融機関に亡くなったことを連絡すると口座が凍結され、原則として、相続が終わるまでは預金の引出しや株の売却ができません。
しかし、条件を満たす相続人が一定額以下の預金を引き出す場合や、家庭裁判所が認めた場合に限り、相続預金を払い戻すことが可能です。
この預金については、払い戻しを受けた相続人が取得したものとして扱われます。
●公共料金、各種サービスへの連絡
光熱費や通信費、家賃など、支払いに関する名義変更を行います。
利用料や会費などが自動引き落としになっている場合は、口座凍結により支払いが滞ってしまうので、当面現金払いに変更する方が良いでしょう。
●クレジットカードのマイル相続
JALやANAなどのマイルが貯まるクレジットカードを持っている場合は、マイルを相続財産として引き継ぐことができます。
航空会社によっては、手続き期限を6ヵ月としている場合もあるため、早めに確認を行いましょう。
●運転免許証やパスポート
運転免許証の返納は不要ですが、亡くなったことを連絡しないと更新連絡等の通知が届くことがあるため、通知停止の手続きを行いましょう。
また、パスポートは最寄りのパスポート申請窓口などで失効手続きを行います。
●生命保険金の請求、受け取り
生命保険の死亡保険金は、予め受取人が指定されているため、遺産分割に関係なく請求できます。
ただし、保険金額は遺産として計上されるため、誰がいくら受け取ったのかがわかる書類はしっかりと保管しておきましょう。
遺言書の確認
遺言書がある場合、相続の方針は遺言書の意思に従うことになります。
遺産分割が終わってから遺言書が発見されたとしても、優先されるのは遺言書の内容のため、とにかく遺言書の有無を徹底的に調査することが重要です。
相続人の調査
被相続人の出生から死亡までのすべての期間の戸籍謄本を取り寄せ、どのような親族がいるのかを明らかにし、誰が相続人に該当するのかを把握しましょう。
●相続人の範囲と順位
親族なら誰もが必ず相続人になるわけではなく、民法によって範囲と順位が定められています。
順序 | 優先順位、被相続人との関係 |
常に | 配偶者 |
第1順位 | ①子、②孫、③ひ孫 |
第2順位 | ①父母、②祖父母、③曾祖父母 |
第3順位 | ①兄弟姉妹、②甥姪 |
相続財産の調査、評価
被相続人が亡くなる前にどのような資産を所有していたのか、また債務がどのくらいあるのかを調査します。
プラスの財産は遺産総額に計上し、そこからマイナスの財産を差し引いたものが、正味の遺産総額になるというわけです。
●プラスの財産(遺産に計上するもの)
・現金、預貯金、上場株式・投資信託・非上場会社株式、土地、家屋、貸付金、貴金属・美術品など経済的価値のあるものすべて
・死亡保険金、死亡退職金
・被相続人から相続人が受けた生前贈与のうち「3年以内(令和6年(2024年)以降の贈与から7年以内に改正)の贈与財産」や「相続時精算課税制度適用の贈与財産」(令和6年(2024年)以降の贈与財産から年110万円超部分のみに改正)
・結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税の適用を受けた贈与財産の管理残額(受贈者が23歳未満の場合を除く)など
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★令和6年(2024年)税制改正 相続税や贈与税、土地譲渡に関するもの抜粋
●マイナスの財産
・被相続人の債務
・被相続人の葬儀にかかった費用
・死亡保険金、死亡退職金の非課税枠(それぞれ、500万円×相続人数)など
●遺産に含まない財産
・日常的な礼拝に使用している墓地や墓石、仏壇、神棚、神具など
・特定の団体などに対して寄付をした財産など
●遺産の評価
遺産の価格は「相続開始時点の時価」となるため、それぞれ定められた方法で評価額を算定しますが、専門知識がないと判断が難しいものもあります。
評価が難しい代表的な遺産は土地で、土地にも相続税にも強い税理士に依頼することで、納税額を大幅に減額できるでしょう。
相続放棄、限定承認の申述(3ヵ月以内)
遺産の調査と評価が終わったら、「相続をするのか」について考えます。
例えば、明らかに借金等の負債が多く、相続することで損害を被る場合などは、「相続しない」という選択をすることもできるのです。
●相続放棄
遺産のすべてを相続しないという選択です。
他の相続人の意向に関わらず自分ひとりだけでも選択できます。
●限定承認
債務については遺産と相殺できる範囲のみ相続するという選択で、相続人全員が同じ選択をしなければなりません。
相続放棄と限定承認は、相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所で申述をすることで選択が可能になりす。
口頭で告げただけや、私文書作成だけでは、相続放棄や限定承認をしたことにならない点に注意が必要です。
●単純承認
すべての財産と債務を相続するという選択で、遺産に手をつけたりどちらの申述も行わなかった場合は自動的に単純承認を選択したとみなされます。
遺産分割協議の開始
遺言書の有無、相続人の確定、正味の遺産の書き出しと各遺産の評価を一覧にした財産目録を作成し、相続についての意向を確認したら、正式な放棄者以外の全相続人で遺産をどのように分けるのかについて話し合いましょう。
相続人全員が合意するのであれば、法定相続分にしばられずどのような割合で分割してもかまいません。
また、遺言書があった場合でも全相続人が納得のうえ遺産分割協議をすることも可能です。
●遺産分割協議書の作成
遺産分割協議の成立後は、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議で合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停や審判を行うことになり時間がかかることが想定されるため、なるべく早いうちから協議を始めておくと安心です。
遺産相続手続きの流れ〜1年以内
各種名義変更や各届出連絡は一段落して、相続手続きの準備を進めている頃ではないでしょうか。
準確定申告(亡くなってから4ヵ月以内)
被相続人が毎年所得税の確定申告を行っていた場合は、相続人全員で連帯して亡くなった方の確定申告を行います。
これを「準確定申告」といい、相続開始から4ヵ月以内に済ませなくてはなりません。
また、亡くなった時期によっては、前の年についての確定申告が済んでいないこともあるでしょう。
その場合は、前年分も当年分と同時に申告、納税を行います。
遺産分割協議書が必要な相続手続き(なるべく早く)
遺産分割協議が成立して遺産を取得しても、名義変更手続きなどを行うまでは売却や払い戻しができません。
また、すぐに売却しないからと放置しているうちに相続人も亡くなってしまうと、次の相続時に手続きがスムーズに行えない可能性もあるため、なるべく早めに済ませることをおすすめします。
名義変更をするためには、遺産分割協議書、あるいは遺言書の写しを用意しておきましょう。
遺産分割協議書や遺言書の写しが必要な手続き | 提出先 |
・預貯金の名義変更、払戻し | 金融機関 |
・相続登記、不動産の名義変更 | 法務局 |
・自動車の名義変更< | 運輸支局 |
・株式等の名義変更 | 証券会社 |
相続税申告、納付(10ヵ月以内)
相続税申告に必要な確認や書類が整ったら、相続税額を計算し、申告用の書類を作成します。
各申告用紙は税務署窓口や国税庁のWebサイトのダウンロードページなどから入手でき、一般的に必要な書類は以下のとおりです。
・相続人の身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど) ・相続人の番号確認書類(マイナンバーカード、マイナンバー記載の住民票など) ・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、または相続情報一覧図 ・遺産分割協議書、または遺言書の写し ・他、控除や特例の適用要件を満たすことを証明する書類 |
相続税の申告場所は、「被相続人の住所地を管轄とする税務署」です。
また、納税は現金での一括納付が原則で、税務署窓口や全国の金融機関で行えます。
遺留分侵害額の請求
遺留分とは、兄弟・姉妹以外の各相続人について、被相続人の財産から取得することが法律によって保障されている最低限の取り分のことです。
遺言書による遺贈や生前贈与によって、本来取得できる遺産を受け取ることができなかった場合は、他の相続人や受贈者に対して遺留分の支払いを請求することができます。
この遺留分侵害額の請求期限は、相続の開始及び遺留分の侵害を知ったときから1年以内です。
遺留分の侵害を知らずにいた場合も、相続開始から10年で請求権が消滅します。
遺産相続手続きの流れ〜3年以内
被相続人が亡くなって2~3年を目処に、様々な請求権が時効を迎えます。
請求し忘れているものがないかを確認しておきましょう。
葬祭費、埋葬料の申請(2年以内)
被相続人が加入していた健康保険から、葬儀費用が支給されます。
実際に葬儀を行い、その後、2年経過すると請求する権利を失うので注意しましょう。
●国民健康保険、後期高齢者医療制度:葬祭費
国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった場合は、喪主に対して「葬祭費(市区町村によって金額が異なる)」が支給されます。
●健康保険:埋葬料
健康保険加入者が業務外の事由により亡くなった場合は、生計を維持されていた喪主に対して一定額の埋葬料が支給されます。
勤務先を通じての請求になるため、死亡に伴う諸手続時に済ませておくほうが良いでしょう。
死亡一時金の請求(2年以内)
国民年金加入者が亡くなった場合で、遺族に「遺族基礎年金」の受給対象者がいないときは保険料納付月数に応じた死亡一時金が支払われます。
受給資格は、亡くなった人と生計を一にしていた①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹のうち優先順位の高い人です。
「申告後3年以内の分割見込書」を提出した場合の相続税軽減手続き(3年以内)
何らかの事情により相続税の申告期間内に遺産分割協議が成立しなかった場合でも、法律で定められた法定相続分に従って相続税額を算出し、申告と納税を行う義務があります。。
この場合、配偶者控除や小規模宅地等についての特例などの税額軽減制度の適用は受けられませんので、遺産分割がまとまった場合に比べて各人の相続税額は高額になりがちなので注意が必要です。
●申告期限後3年以内の分割見込書
申告期限までに分割されていない遺産について、分割されていない理由と分割の見込、分割後に適用を希望する控除や特例等を記載する書類を「申告期限後3年以内の分割見込書」といいます。
この書類は相続税の申告書に添付して提出しておいて、次の条件と適用要件を満たした場合は、相続税の軽減制度の適用を受けることが可能です。
①申告後3年以内の分割見込書の提出(相続開始から10ヵ月以内) ②申告期限後、3年以内に分割を終えること ③遺産分割後、4ヵ月以内に実際の取得状況に応じた相続税の申告を行うこと |
生命保険金の請求(3年以内)
保険金や給付金を請求する権利は、保険法により「保険金や給付金を支払う事由発生」から3年後に失効します。
保険会社や契約状況によっては3年経過後も請求手続きを受け付けてくれる場合もありますが、法律上の時効は3年です。
保険金や給付金の請求を後回しにしていた場合や、後日わかった契約がある場合は、なるべく早く請求手続きを行いましょう。
●保険料の返還請求(5年以内)
保険契約があることを見落としていて、被相続人が亡くなったあとも保険料を払い込んでいたという場合は、亡くなった日以降の保険料を返還してもらえます。
この場合の請求権も、亡くなってから3年後に失効することを覚えておきましょう。
税務調査(5年以内)
税務調査とは、申告内容に間違いがあった場合に、税務署の担当者などが行う実地調査のことです。
国税庁では実施時期を明らかにしていませんが、一般的には申告後1年から3年以内に行われることが多いですが、法律的には申告期限から5年(悪質な場合は7年)まで時効は到来しません。
●修正申告
実際よりも少ない税額で申告、納税していた場合は、修正申告と不足分の納税をすることになります。
不足分の納税については、延滞税が課される場合もある点に注意しましょう。
遺産相続手続きの流れ〜5年以内(相続税還付)
相続税の申告では、後日生じた要因により相続財産の評価額が増減することが珍しくありません。
また、土地などは評価を行った税理士によっても金額が異なるため、別の税理士に再評価を依頼した結果、大幅に減額されるという可能性もあります。
一度申告を済ませていても、申告書類等はしっかり保存しておきましょう。
相続税の還付手続き(5年以内)
実際よりも多い税額で申告及び納付をしていた場合は、税務署に対して「更正の請求」を行うことができます。
請求内容が正当だと認められると、納め過ぎた税金が還付されるというわけです。
相続手続きは、プロにお任せ!
相続の開始から申告期限までの10ヵ月は、様々な手続きが重なるということをおわかりいただくことができたと思います。
自分でやろうとしたものの、不慣れな上に同時進行で行うことが多すぎて疲弊してしまうというのはよく聞く話です。
また、専門家でないと適正な判断をくだすことが難しい場面も多く、実際よりも多い税額を納めることになりかねません。
納税額を左右する相続税手続きは、プロに任せる方が安心です。
まずは無料相談サービスなどをお使いいただき、情報収集や自分のケースに合った税理士を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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