死亡保険金を受け取った時に発生する税金は?保険金と給付金の違いとは?
生命保険には加入していますか?
相続が発生した時に、意外と役に立つのが生命保険です。
しかし、生命保険の加入時に、相続の説明までは聞いていないという人も多いのはないでしょうか。
現金化しやすく受取人が明確なため、遺産分割協議の必要が無く、利便性が高い死亡保険金ですが、契約内容によっては余計な税金を納めることになりかねません。
この記事では、死亡保険金にかかる税金の種類や税額、また相続を見据えた生命保険の活用方法について詳しく解説します。
死亡保険金の受取人によって税額が変わる
生命保険の世帯加入率は約90%と高水準で、多くの人が何らかの保険を契約しているということがわかります。
しかし、生命保険に加入する際に、税金のことを意識している人は少ないのではないでしょうか。
実は、誰が契約者になるのか、誰が保険金を受け取るのかといった組み合わせによって、死亡保険金を受け取った際の課税関係が異なり、納税額にも大きな差が生じます。
保険契約における3つの役割
まずは、「契約者・被保険者・受取人」という用語について案内します。
契約者 (保険料負担者) |
契約にかかる様々な権利と保険料の支払い義務を持つ |
被保険者 | 保険の対象者 |
受取人 (保険金受取人) |
保険金を受け取る人 死亡保険金は、必ず被保険者と別の人が受け取る |
保険契約は、基本的に契約者のものだと考えるとわかりやすいでしょう。
契約者・被保険者・受取人の組み合わせによる税目の違い
下記の一覧表のとおり、「契約者・被保険者・受取人」の組み合わせによって、死亡保険金を受け取る際にかかる税金の種類が異なります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 死亡保険金受取時の税目(税金の種類) |
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税・住民税 |
A | B | C | 贈与税 |
ここでは「保険料を支払っている人(契約者)が、保険金を受け取ったかどうか」という点が重要なポイントです。
知っておきたい3種類の税金について解説
ここからは、税目の違いによって納税額がどのくらい変わるのかを実際に計算してみましょう。
死亡保険金額を2000万円と仮定して、税目ごとに解説していきます。
相続税の対象となるケース
契約者と被保険者が同一人の場合、死亡保険金はその人の相続財産であるとみなされます。
死亡保険金の受取人が法定相続人の場合は「相続」、法定相続人以外の人が受け取る場合は「遺贈」として扱うため、かかる税金は相続税です。
このケースに該当する「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻」を例に用いて、課税金額を計算してみましょう。
●死亡保険金の相続税課税金額を計算
税金の対象となる課税金額を算出するために、非課税枠や控除額を差し引きましょう。
①非課税枠の適用
非課税枠は、法定相続人が受け取った死亡保険金額のうち、次の金額まで非課税になるという制度です。
死亡保険金額の非課税枠 | 500万円×法定相続人数 |
夫の死亡保険金の受取人は妻1人のため、2000万円-(500万円×1人)=1500万円となります。
②基礎控除の適用
基礎控除は、死亡保険金額を含む相続財産の合計額に対して一定額が控除されるという制度です。
基礎控除額 | 3000万円+(600万円×法定相続人数) |
非課税枠適用後の死亡保険金額1500万円よりも、基礎控除額が大きい場合は、相続税の課税対象金額は0円となります。
●相続税率
相続税額の計算では、課税遺産総額を法定相続分で割ったものに税率をかけ、法定相続人ごとの相続税額を算出します。
その相続税額を合計し、実際の遺産取得割合に応じて割り振った額が各自の納税額です。
法定相続分に応じた取得金額 | 相続税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
所得税の対象となるケース
契約者と死亡保険金受取人が同一人物の場合、契約者にとっては自分で支払った保険料が死亡保険金として戻ってきたという構図になります。
この場合の死亡保険金は、「労働などの対価でもない一時的な所得」として扱われるため、対象となる税金は所得税です。
なお、死亡保険金を一括で受け取った場合は「一時所得」、年金型のように分割で受け取った場合は「雑所得」となり、それぞれ別の一時所得や雑所得と合わせて税額計算をおこないます。
●死亡保険金の所得税課税金額を計算
所得税の計算では、まず所得の種類ごとに課税金額を算出します。
保険金を所得として扱う場合、保険料は「保険金を得るための経費」として保険金額から差し引くことが可能です。
・一時所得の課税金額:{(死亡保険金額-既払保険料)-特別控除50万円}×1/2
・雑所得の課税金額:(死亡保険金額-既払保険料)
一時所得で受け取る死亡保険金を「死亡保険金額:2000万円、既払保険料:360万円」とすると、課税金額は795万円となります。
雑所得で受け取る死亡保険金を「死亡保険金額:200万円×10年、既払保険料:36万×10年」とすると、1年あたりの課税金額は164万円です。
●所得税率
一時所得や雑所得は、給与所得など他の課税所得との合計額に応じた税率で、納税額を計算します。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円~ | 45% | 479万6000円 |
課税所得金額には、所得税の他にも次の税金がかかるという点を覚えておきましょう。
・復興特別所得税:課税所得×2.1%
・住民税:課税所得×10%
贈与税の対象となるケース
契約者と被保険者、死亡保険金受取人がそれぞれ異なる契約では、死亡保険金にかかる税金は贈与税となります。
契約における権利者である契約者が、「死亡保険金を受け取る権利」を受取人に譲るという構図になるためです。
●死亡保険金の贈与税課税金額を計算
贈与税の課税金額は、その年の贈与財産合計額から下記の基礎控除額を差し引いて算出します。
・贈与財産の課税金額:贈与財産額-基礎控除110万円
死亡保険金以外の贈与財産がない場合、課税金額は1890万円となります。
●贈与税の計算
贈与税率は、贈与をする人と受け取る人との関係や年齢によって税率が異なる点に注意しましょう。
贈与を受けた年の1月1日現在において18歳以上の子や孫が、父母や祖父母から贈与を受けた場合のみ「特例贈与財産用」の税率で計算します。
例えば、「契約者:夫、被保険者:妻、受取人:子」といった契約で死亡保険金を受け取る場合、子が18歳未満なら「一般贈与財産用」、子が18歳以上なら「特例贈与財産用」で計算するということです。
・特例贈与財産用
課税価格 | 贈与税 一般税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ‐ |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
・一般贈与財産用
課税価格 | 贈与税 特例税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ‐ |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
受取人は法定相続人に!非課税枠が使えて、税負担減!
死亡保険金を受け取る際は、非課税枠や控除制度などにより高い税額軽減効果が得られる「相続税の対象契約」が最も税負担が軽くなることがわかりました。
しかし、せっかくの非課税枠も「受取人が法定相続人」でなければ意味がありません。
非課税限度額の計算式は「500万円×法定相続人数」ですが、法定相続人以外が受け取った保険金は非課税枠の適用外だという点に注意しましょう。
法定相続人の範囲
法定相続人とは、民法によって定められた相続の権利を持つ親族のことです。
配偶者は常に法定相続人となり、その他の親族は下表の順序で法定相続人になります。
順序 | |
第1順位 | 子(孫、ひ孫) |
第2順位 | 父母(祖父母、曾祖父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹(甥姪) |
例えば、第1順位の「子」が亡くなっていた場合は、「その子の子(孫)」が法定相続人となり、孫が亡くなっていた場合は「その子の子の子(ひ孫)」が法定相続人となるわけです。
上の順位に該当する人が誰もいない場合に限り、下の順位へと権利が移動します。
死亡保険金受取人の範囲
死亡保険金受取人は、生命保険を契約する時に契約者が指定します。
生命保険の契約について定めた保険法では、保険金受取人について特別な条件は記載されていません。
しかし、生命保険の死亡保険金は遺族の生活を支えることを目的としているため、多くの保険会社では、被保険者にとって「二親等以内の血族」の指定を推奨しています。
受取人を法定相続人にする意味とは
例えば、「契約者:夫、被保険者:夫、受取人:夫の母親」という契約の場合、夫の母親は夫にとって二親等以内の血族にあたるため、保険契約上の問題はありません。
しかし、夫に子がいた場合、夫の母親は法定相続人になれないため、死亡保険金額の非課税限度額は適用されないということになります。
独身時代に契約した保険、貯蓄性が高い保険で長い間契約確認をしていない保険などがある場合は、一度確認しておいたほうが良いでしょう。
≪関連ページ≫
●相続税の課税対象となる財産と、非課税の財産とは
●相続人の中に養子がいるときの「法定相続人の数」
課税対象の額を少なくするポイント
税金の計算では、最後はたいてい「課税金額×税率」という計算になるため、課税金額を減らすことが節税につながることは明白です。
保険契約の場合、死亡保険金受取人を予め法定相続人に指定しておくことで、次のようなメリットが期待できます。
メリット1.非課税枠を最大限活用できる
例えば、「契約者:夫、被保険者:夫」の契約で、妻や子に死亡保険金受取人に指定すると非課税枠の1000万円が使え、保険金2000万円のうち半分が非課税になります。どちらか1人にしても2人分の非課税が使えます。
●受取人を指定する2つの方法
法定相続人数分の受取人を指定するためには、2つの方法があります。
複数の保険契約それぞれに異なる受取人を指定する方法と、1つの保険契約に複数の受取人を指定し「受取金額の割合」を設定する方法です。
契約者は、保険金を支払う事由が発生するまではいつでも受取人や割合を変更することができるため、新たな契約を結ぶ前に手持ちの保険を確認してみると良いでしょう。
●ワンポイントアドバイス
配偶者には『配偶者の税額軽減』という超特例(1億6千万円までの相続又は法定相続分までは相続税が軽減される)がある為に、死亡保険金の受取人は子にしておく方が更に有利となるコツがあります。
メリット2.自由度の高い資金が手に入る
例えば、ある程度の相続税を負担することになった場合、手持ちの資金からは用意できないものの受け取った遺産を売却すれば支払えるという状況になることも考えられます。
しかし、自宅として居住している不動産など、簡単に売却するわけにはいかないケースもあるでしょう。
そのようなケースでも、死亡保険金は現金で支払われるため、自宅を残したまま納税資金を準備することが可能です。
また、予め受取人が指定されているため遺産の分割協議をおこなう必要がなく、納税以外にも当面の生活費や遺産整理の雑費などとして自由に使える点もメリットです。
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●相続税の対象になる死亡退職金と非課税枠
税金がかかる保険金と給付金の種類について
生命保険には、死亡保険以外にも医療保険やがん保険など、いくつもの種類があります。
よって、死亡保険金だけでなく、入院給付金や手術給付金、がん診断給付金、生活習慣病給付金、介護給付金、就業不能給付金など、様々な保険金や給付金を受け取ることがあるでしょう。
実は、治療費用や収入保障として生前中に受け取るほとんどの保険金や給付金には、税金がかかりません。
ただし、貯蓄や増資を目的とした保険の保険金は課税対象となります。
貯蓄性のある保険金にかかる税金
貯蓄性のある保険とは、養老保険や個人年金保険のように、保険期間終了時に生存していた場合に満期保険金等を受け取るタイプの保険のことです。
満期保険金等を受け取る際も、条件によって課税関係が異なります。
この時、重要なポイントは「契約者と受取人の関係」と「被保険者の生死」であり、「被保険者が誰か」という点は不問であることが多いため表からは省きました。
●満期時に被保険者が生存している場合
死亡保険金と同様に、保険料負担者が受け取る場合は所得税の対象となり、それ以外の場合は、保険料負担者から受け取る権利を譲られたとみなして贈与税の対象となります。
契約者 | 満期(年金)保険金受取人 | 一時金型の税目 | 年金型の税目 |
A | A | 所得税 | 所得税 |
A | B | 贈与税 | 初年度:贈与税 2年目以降:所得税 |
満期保険金等については、契約時あるいは受取時に、「一時金」あるいは「年金」のどちらで受け取るかを選択できる場合もあります。
年金型で受け取る場合は、最初の受取時に「受け取る権利」を譲られたとして贈与税、2年目以降はすでに受け取る権利を手にしているため所得税がかかるというわけです。
●満期前に、被保険者が亡くなった場合
貯蓄性のある保険でも、途中で被保険者が亡くなった場合の死亡保険金額は予め決められており、契約時には死亡保険金受取人を指定します。
この場合の課税関係は、前述した死亡保険金の「契約者・被保険者・死亡保険金受取人」の関係と同じです。
●年金開始後に、保険金受取人が亡くなった場合
年金を受け取っている途中で保険金受取人が亡くなった場合は、年金を受け取る権利(年金受給権)を遺族が取得するということになります。
この時、「保険料を支払っていた契約者」と、お金を受け取る「年金受給権取得者」が同じかどうかによって税目が変わるという点は、死亡保険金についての課税関係と同じです。
契約者 | 満期(年金)保険金受取人 | 年金受給権の相続人 | 税目 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税 |
A | B | C | 贈与税 |
注意したい死亡保険金の相続税申告の期限や税金納付の期限
死亡保険金を受け取った場合、課税金額等によっては対象となる税金の申告と納付が必要となるでしょう。
その場合、対象となる税金によって申告や納付の時期が異なる点に注意が必要です。
税目 | 期限 | 管轄税務署 |
相続税 | 被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヵ月以内 | 被相続人の住所地 |
所得税 | 所得があった翌年の2月16日から3月15日(確定申告) | 所得を受けた人の住所地 |
贈与税 | 贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日(確定申告) | 受け取った人の住所地 |
死亡保険金の受取に伴う税金については税理士に相談しましょう
同じような生命保険でも、契約者や受取人の関係によって課税関係が異なり、納税額にも差があることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
死亡保険金は、遺すことになる家族の生活を守る「最後のラブレター」とも呼ばれています。
家族の思いをしっかりと受け取るためにも、保険契約を検討する際は3つの役割についてよく考えましょう。
最適な方法がわからない場合や、個々に応じた効果的な対策を知りたい時は、税理士に相談するのもひとつの手段です。
又、既に契約している契約内容が税務上、不利になっていないかなども生前中に税理士に確認する方が無難でしょう。
税理士のWebサイトで、自分が求める情報のページを閲覧したり、初回無料サービスを利用して相談をしたりするのも良いですね。
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