法定相続情報証明制度とは?

法定相続情報証明制度とは、相続手続に必要な情報を一覧図にまとめて法務局に保管する制度です。
通常、相続関係の手続を行う際は、被相続人の戸籍謄本や相続人の住民票といった多くの証明書類を取得して提出しなければなりません。
その代わりとして使えるものが法定情報一覧図になります。
法定情報一覧図は、写しの交付を何度でも無料で受けられるため、活用することで相続手続が格段に楽になるという仕組みです。

本記事では、法定相続情報一覧図の作成方法や申し出に必要な書類、申請の流れ、利用のメリットについて詳しく解説します。

法定相続情報一覧図を取得できる

法定相続情報一覧図を取得できる

2017年(平成29年)、全国の法務局で「法定相続情報証明制度」が施行されました。
法定相続制度とは、亡くなった人(被相続人)に対する相続関係者の情報を保管し、「法定相続情報一覧図」を交付するための制度です。
法定相続情報一覧図では、被相続人の遺産を相続する権利者を1枚で把握することできます。
法務局の認証文によって、記載内容の証明もできるため、さまざまな相続手続に役立つでしょう。

誰が「法定相続情報一覧図」を取得できる?

誰が「法定相続情報一覧図」を取得できる?

法定相続情報一覧図の申し出や交付申請ができる人は、その相続における法定相続人か、法定相続人から依頼を受けた弁護士・司法書士・税理士などの専門家です。

法定相続人とは誰のことか

法定相続人とは、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つ親族のことで、民法によってその範囲と順序が定められています。

常に:配偶者

被相続人の配偶者は、常に法定相続人です。
この時の配偶者とは、入籍を済ませ正式な婚姻関係を結んだ相手に限られます。
事実婚パートナーや内縁関係の相手は、法的に証明できないため配偶者として認められません。

配偶者以外の親族は、配偶者と共に法定相続人となります。
その場合の順序は、次の通りです。

第2順位:子ども(孫)

被相続人に子どもがいる場合は、優先的に法定相続人となります。
複数の子がいる場合は同列で法定相続人となり、年齢や実子・養子などは問われません。
相続開始より先に亡くなっている子どもがいる場合は、その直系卑属(子・孫)が代襲相続人として相続の権利を引き継ぎます。

第3順位:父母(祖父母)

被相続人の父母は、第2順位の法定相続人です。
この場合の父母は被相続人の直系尊属で、姻族である配偶者の父母は含まれません。
相続開始より先に父母の双方が亡くなっている場合は、祖父母が法定相続人となります。

第4順位:兄弟姉妹

被相続人に、子や孫、父母や祖父母がいない場合に相続の権利を得るのは、被相続人の兄弟姉妹です。
相続開始より先に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合は、その子(甥姪)が法定相続人となります。
なお、直系卑属の代襲相続は孫の代まで続きますが、兄弟姉妹の場合は1代のみです。

法定相続人は代理人を立てられる

申出人となった法定相続人は、法定相続情報一覧図の申し出や交付にかかる各種手順を代理人に依頼することができます。
代理人を委任できる範囲を下記で案内しましょう。

●法定相続人の親族
この場合の親族とは、申出人の配偶者、6親等内の血族、2親等内の姻族です。

●資格代理人
依頼を受けて代理人の役割を担うことができる資格者は、弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士、弁理士、土地家屋調査士、海事代理士、行政書士に限ります。
一口に資格者といってもそれぞれ領域が異なるため、自分の相続で抱える問題を相談できそうな資格者を選ぶとよいでしょう。

●法定代理人
未成年者は相続にまつわる法的行為をすることができません。
その場合は、親権者や裁判所によって選出された後見人が代理人となります。
そのため、成人していない法定相続人が申出人となる場合は、法定代理人の選任が必要です。

取得のメリットを解説!相続税の申告や遺産の名義変更などが楽になる

取得のメリットを解説!相続税の申告が楽になる

被相続人が亡くなったことを知った日から、「相続」が始まります。
相続とは、被相続人が所有していた財産に応じた相続税額を算出し、申告と納付を行う一連の手続です。

相続開始から相続税申告・納付完了までの流れ

相続税の申告と納税は、相続開始から10ヵ月後を期限としています。
配偶者や親といった近い親族が亡くなった悲しみと混乱の中、いくつもの非日常的な作業を短期間で行わなければなりません。
相続内容はそれぞれの家族構成や事情によって異なりますが、一般的な流れをご案内します。

①遺言書の有無の確認
遺言書では、遺産分割の割合指定や取得者の指名のほか、相続人の廃除や非嫡出子の認知などが可能です。
遺言書がある場合は、基本的にその内容に従う必要があります。
法定相続人が変動する可能性もあるため、相続開始直後に遺言書の有無を十分に確認することが大切です。

②法定相続人の確認
被相続人に対する法定相続人が誰なのかを確認します。
確認するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集めなくてはなりません。

③遺産と債務の調査・評価
被相続人が残した財産と債務を調べて、相続税法に従って評価します。

④遺産分割・各種相続手続
遺言書の指定がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。
預貯金口座や有価証券口座を相続する場合は、金融機関の定めた手順に従って相続関係を証明するまで残高の払い出しができません。
また、不動産を相続した場合に行う相続登記でも、相続関係の証明が必要です。

⑤相続税の申告と納税
相続税の申告手続でも、被相続人と法定相続人の関係を証明するための戸籍謄本等を提出します。

相続関係の証明に必要な書類とは

ここまでに紹介した手順で「被相続人と法定相続人の相続関係を証明する」タイミングが、何度もあることをおわかりいただけたでしょうか。
相続手続には煩雑な作業が多いですが、なかでも手間と費用がかかるものがこの相続関係証明書類の収集です。

相続関係を証明するためには、主に次の書類が必要となります。

必要な証明書 取得先 一般的な手数料/1通
被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
※出生から死亡まで、すべての謄本
被相続人の本籍地の市区町村役場 ・戸籍謄本:450円
・除籍謄本:750円
・改製原戸籍謄本:750円
被相続人の住民票の除票・戸籍の附票 被相続人の最後の住所地の市区町村役場 ・住民票除票:300円
・戸籍の附票:200円
法定相続人全員の戸籍謄本・抄本
※相続開始日から10日経過以降に取得したもの
各相続人の本籍地の市区町村役場  

●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得する手順
①死亡時の本籍地で戸籍謄本を取得
②戸籍謄本に記載された「1つ前の本籍地」で戸籍謄本を取得
③同じ手順を繰り返して、出生の記載があるまでさかのぼる

戸籍は、結婚や離婚、養子縁組や転籍などを行うたびに新しく作られます。
本籍地が変わらなかったケースならば1ヶ所ですべて入手することができますが、転籍の多いケースではそれぞれの本籍地の市区町村役場に交付を請求することになるでしょう。
直接行く場合には交通費が、郵送を利用する場合には郵送費などがかかります。
交付手数料も考えると、それなりの出費を覚悟しなければなりません。

法定相続情報証明制度のメリットとは

法定相続情報証明制度は、「被相続人と法定相続人の相続関係」「法定相続人の居住地」などを一覧図にまとめて、法務局の認証文を得るという制度です。
認証文を付した法定情報一覧図は、「相続関係を証明する書類の束」と同様の効力を持ち、さまざまな手続で利用できます。

このことで、次のようなメリットがあるでしょう。

メリット1:手続が楽になる

書類の束を用いて複数の機関で手続をする場合、同じ束を何セットも用意しなくてはなりません。
いずれも重要な個人情報であり、紛失しないよう気を配る必要があります。
しかし、法定相続情報一覧図は、相続手続に必要な情報がまとめられているものです。
法定相続情報一覧図なら1枚で書類の束に代えられるため、管理の負担が大幅に軽減するでしょう。

メリット2:大きなコストダウンになる

書類の束を1セット取得するためには、手数料だけでも数千円のコストがかかります。
必要な戸籍件数が多い場合、転籍が多い場合は、1万円を超える場合もあるでしょう。

しかも、相続関係を証明する場面は、1度きりではありません。
手続によっては書類返却がされないケースもあるため、複数セット用意しておく必要があります。
金融機関との取引や所有不動産が多い場合は、証明書類取得コストだけでも相当な出費になるでしょう。

一方、法定相続情報一覧図は、一度登録すると何度でも再交付を受けることができます。
再交付は無料のため、相続手続にかかるコストを大幅に削減できるというわけです。

法定相続情報一覧図の取得方法 と交付期間、有効期限

法定相続情報一覧図の取得方法 と交付期間、有効期限

ここからは、実際に法定相続情報証明制度を利用する際の具体的な手順について説明します。

①必要書類を取得する

法定相続情報を登録するために必要な書類は、以下の通りです。

●相続関係を証明する書類
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・法定相続人全員の戸籍謄本 
・被相続人の親の戸籍謄本・除籍謄本 ※被相続人の兄弟姉妹が法定相続人の場合
・代襲相続人の戸籍謄本と亡くなった人(被代襲相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本 ※代襲相続がある場合

●申出人の身分を証明する公的書類
下記のいずれか1点
・マイナンバーカード(表裏両面のコピー)
・運転免許証(表裏両面のコピー)
・住民票の写し など

記載内容によって異なる必要書類

法定相続情報一覧図には、記載の有無を選択できる項目があり、選択によって必要書類が異なります。

●住所を記載する場合
・各相続人の住民票の写し

各法定相続人の住所を記載するかどうかは任意です。
記載すると、住所地の確認が必要な手続において住民票の提示・提出を省略できるという利点があります。

●続柄を記載する場合
法定相続人の続柄表記を「子」とするか、続柄を記載するかについて選択可能です。
「子」とのみ表した場合は、一部の手続において一覧図を証明書類の代わりとして利用できない可能性があるでしょう。
続柄を記載する書類は相続関係を証明する各書類と重複するため、別途提出する必要はありません。

代理人が手続をする場合の必要書類

代理人に手続を委任する場合は、ここまでの書類に加えて下記の書類も必要です。

●親族を代理人とする場合
・委任状
・申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本
※相続関係の証明等で提出する書類と重複する場合は、1通でかまいません。

●資格者が代理する場合
・委任状
・資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等

すでにお伝えした通り、代理人として依頼できる相手は親族か特定の資格者のみとなります。
代理を依頼できる業務は、申出書の作成や申請手続だけでなく、関連資料の収集や一覧図の作成までと幅広く、専門家に依頼することでミスや不備を回避することができるでしょう。
相続手続を簡便にするための制度が、かえって相続人の負担になるようでは本末転倒です。
相続に強い資格を持つプロに依頼するというのも、1つの手段として検討するとよいでしょう。

②法定相続情報一覧図を作成する

被相続人の戸籍記載内容から判明する法定相続人を記載した「一覧図」を作成します。
一覧図は、被相続人から連なる血縁関係者を示す家系図のようなものです。
法務局のホームページには、「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」を紹介するページがあります。
法定相続人ごとのケースに応じた記載例と様式のダウンロードもできますので、確認しておくとよいでしょう。

③申出書の記入・登記所に提出

申出書に必要事項を記入し、取得した必要書類や作成した一覧図を添えて、法務局の窓口(登記所)に提出します。
提出先となる登記所は、以下のいずれかから選択可能です。

●法定相続情報の申出先
・被相続人が亡くなった時の本籍地を管轄する登記所
・被相続人が亡くなった時の住所地を管轄する登記所
・申出人となった法定相続人の住所地を管轄する登記所
・被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所

一覧図の写しの交付は、申し出を行った登記所以外では受け付けることができません。
何度か行く可能性を考慮して、申出人に都合のよい場所にある登記所を選ぶことをおすすめします。

④手続の完了・保管・相続情報一覧図の交付(初回)

手続に必要な期間は、提出書類に不備がなければ通常2~7日程度です。
手続が完了すると、登記官が認証文を付した相続情報一覧図の写しが交付され、あわせて添付した各種証明書類等が返却されます。
窓口で受け取る際は、申出書に記載した「申出人の氏名・住所」と同一であることが確認できる公的書類が必要です。

●受取時に必要な書類
・マイナンバーカード
・運転免許証
・住民票記載事項証明書(住民票の写し)など

郵送による交付を希望する場合

法定相続情報一覧図は、郵送してもらうこともできます。
その場合は、申出書にその旨を記載し、返信用封筒と必要な郵便切手を添えることが必要です。
必要な郵便切手については、交付枚数や返却書類等の量によって金額が異なるため郵便局等で確認しておきましょう。

⑤相続情報一覧図の再交付(2回目以降)

登録した法定相続情報一覧図は、法務局で5年間保管され、何度でも無料で再交付できます。
相続税の申請と納付は相続開始後10ヵ月が期限ですが、相続にかかる諸手続には数年かかることも珍しくありません。

なお、不動産の相続登記については3年間の申請期間が設けられています。
期限が過ぎても正当な理由なく登記を行わないと、罰金が科される可能がありますので早めに手続をしておきましょう。

相続ステーションが取得から相続税申告までをサポートします

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法定相続情報一覧図は、相続関係書類を取得する手間やコスト、精神的負担を大幅に削減するメリットの大きな制度です。
相続税の申告以外にも証明書類の提出先がある場合は、一覧図を作成しておくことをおすすめします。
この制度のデメリットは、1度は証明書類を集めなくてはならない点と一覧図を作成する手間がかかる点くらいでしょうか。
その2点も、資格を持つ専門家に委任すれば、相続人にかかる負担を軽減し、不備のない手続を行うことができるでしょう。

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